今年度は,本研究のアクチュエータとして有望である誘電エラストマについて,より詳しく研究した.火星飛行機のような無人航空機に対する誘電エラストマアクチュエータの適用可能性を検討するため,誘電エラストマアクチュエータを用いて舵を駆動可能な風洞模型を製作し,風洞気流中で動作させた.翼には舵面を設けており,ヒンジで接続した.舵面はリンケージを介して誘電エラストマアクチュエータに接続した.誘電エラストマアクチュエータは有限会社Witsの標準品を用いた.これは外形80mm、内径50mmのドーナッツ状のダイアフラム型誘電エラストマアクチュエータで,誘電エラストマの質量は0.1gである.誘電エラストマアクチュエータの電極には,高電圧電源から電圧を印加できるようにした.本試験では,迎角,印加電圧,気流流速の3種類を変化させ,舵角を計測した.迎角は-10度から10度までとした.印加電圧は3.2kVから3.7kVまでの値とし,約3秒ごとにON/OFFを繰り返して矩形波を入力した.気流流速は0,10,15m/sの3条件で実施した.舵角はスパン方向から撮影した画像から算出した.実験の結果,通風状態であっても電圧を印加することによって舵角が変化していることが確認できた.ただし一方で,同じ印加電圧のON/OFFを繰り返しているのにもかかわらず,舵角値が毎回1度程度ずれてしまっていた.しかしこれは,画像解析による舵角算出の問題の可能性が考えられ,本質的な問題ではない.従って,誘電エラストマの無人飛行機への搭載の有効性を確認することができたといえる.本研究が最終的に目指す機体展開・運動制御融合型航空機の実現に向け,その前段階となる基礎部分について,より深く研究を発展させることができた.
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