研究課題
本研究ではショウジョウバエ嗅覚系をモデルに,Eph/Ephrinシグナルがどのような作動原理で樹状突起投射を制御しているのか,その解明を目指す。神経発生過程でのEph/Ephrinの発現を解析する目的で,内在性Eph, ephrin遺伝子にmyc配列を付加した系統,及びephrin遺伝子の転写活性を利用したephrin-Gal4系統を作製した。その結果,糸球体の構造を形成する発生ステージにおいて,Ephは性フェロモン感知に特化する糸球体神経回路で特異的に強く発現することを見出した。一方Ephrinは,嗅覚系においてユビキタスに発現することを見出した。表現型解析ではMARCM法を駆使し,特定の糸球体に投射する投射神経でのみEph/ephrinをノックダウンすることにより,性フェロモン感知に特化するDA1糸球体神経回路とそれに隣接する神経回路を構成する樹状突起に特異的な異常を見出していた。この同一投射神経内でEph/Ephrinをそれぞれノックダウンしつつ同遺伝子を過剰発現すると,樹状突起の異常が改善された。このことからDA1投射神経ではEphが,周辺の糸球体投射神経ではEphrinが、それぞれ細胞自律的に機能することを見出している。また,周辺の糸球体に投射する投射神経でephrinをノックダウンした時の野生型DA1投射神経の挙動を解析したところ,野生型DA1投射神経もDA1糸球体から隣接した糸球体へと漏れ出た。すなわち,Ephrinが細胞非自律的にDA1投射神経に機能すること,生体内においてDA1糸球体とそれに隣接する神経回路との間ではEph/Ephrinシグナルを用い樹状突起レベルで相互に分離していることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した内容に関しては、ほぼ全て順調に進んでいる。
これまでの研究結果から,DA1投射神経と隣接する投射神経との間はEph/Ephrinシグナルによって厳密に分離され,DA1投射神経では,周囲の糸球体に発現するEphrinとの相互作用の結果,Ephフォワードシグナルが走ることが示唆される。しかしながら,EphrinはDA1糸球体でも発現していることから,DA1糸球体投射神経ではEphが同じ樹状突起上のEphrinと相互作用し,Ephrinの機能を負に調節しているのではないかと予想している。今後は,in vivo/in vitro双方でEph/Ephrinが分子レベルでいかに調節されているかを検証する。加えて,神経回路分離の重要性を個体レベルでも明らかにするため本シグナル操作時の個体行動解析も行う。
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