真菌由来化合物ダイナピノンA (DPA) は、中性脂質であるトリアシルグリセロール (TG) およびコレステリルエステル (CE) の細胞内蓄積を阻害する。また、その機序は生合成経路の阻害ではなく分解経路の促進による可能性が示唆されている。そこで、脂肪滴分解経路の1つであるオートファジーへの影響を調べた。DPAの処理により、オートファジーマーカータンパク質であるLC3-II量の濃度依存的な増加が認められた。また、オートファジーの選択的な分解基質であるp62タンパク質の細胞内蓄積量がDPAの処理により濃度依存的に減少したことから、DPAはオートファジーを促進していることが示唆された。さらに、一般的に知られているオートファジー経路上の因子であるmTORやbeclin-1に対するDPA処理による影響を調べたが、これらに対する影響は確認されなかった。この結果から、DPAの作用点はこれら因子より下流、もしくは未知の経路を介している可能性が示唆された。さらに、蛍光緑色タンパク質 (GFP) が融合したLC3を発現する細胞の構築を行った。プラスミドを細胞にトランスフェクトし、シングルセルクローニングを行うことで、GFP-LC3安定発現細胞を取得した。現在は脂肪滴マーカーやリソソームマーカーとGFPの細胞内局在の解析を行っている。さらにケミカルバイオロジー的アプローチとして、ビオチン化誘導体をはじめとしたDPAのケミカルプローブを合成した。これら誘導体と細胞ライセートを反応させ、DPAの結合タンパク質を取得した。今後、各タンパク質の機能解析を通して、DPAが示す表現系との関連をさらに精査する。 DPAについては、国内・国外学会で発表を行い、現在論文投稿の準備中である。その他、真菌由来であるボーベリオライドIIIの作用機序についても研究を行い、学会発表だけでなく、論文発表に至った。
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