研究課題/領域番号 |
15J12316
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
城(渡辺) 愛理 順天堂大学, 医学(系), 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | エストロゲン / 膜型受容体 / 細胞内局在 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
【研究目的】 本研究では、膜型エストロゲン受容体GPR30の細胞内局在とシグナル伝達を調節する新規分子機構を解明し、性差医療の基盤を構築する。具体的には、GPR30の細胞内局在がどのように調節されているのか、また、異なる局在が与える機能的な意義は何かを明らかにする。 【研究計画と実施状況】 平成27年度の研究計画に基づき、以下の結果を得た。 1)GPR30発現細胞における細胞内局在の観察: GPR30のN末端にFLAGタグ、C末端にHAタグを付加した発現ベクターを作製し、タグ染色によるフローサイトメトリーや共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞内局在部位の観察を行った。 2)GPR30を介した細胞内シグナル伝達: HEK293細胞およびMCF-7細胞を用い、human GPR30安定発現細胞を樹立した。次に、樹立したhuman GPR30安定発現細胞を用いてGPCR機能アッセイを行い、細胞内シグナル伝達への影響を解析した。また、GPR30安定発現細胞を樹立し、GPR30細胞内局在を解析した。GPR30安定発現細胞においても、1)で明らかにした一過性過剰発現細胞におけるGPR30の細胞内局在と同じ局在パターンが観察された。 3)GPR30調節タンパクの同定と機能解析(RAMPsによるGPR30の細胞内局在・シグナル伝達への影響の解析):GPCRの局在とリガンド選択性を変えると報告されているreceptor-activity-modifying proteins (RAMPs)をGPR30と共発現させ、GPR30の細胞内局在とシグナル伝達への影響を解析した。RAMPsは、GPR30の細胞内局在とシグナル伝達へ影響を与えなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の進行状況は、当初の計画通り順調であり、平成28年度の研究計画の一部が既に進行中である。3年間の研究成果のまとめとして、論文執筆・投稿を行う予定である。新規性を保つため、平成27年度は国内外での学会発表は行わなかったが、研究の進捗状況は良好である。また、当初、本研究計画終了後の展開として想定していたin vivoでの解析を迅速に行うため、平成27年度から、in vitroの実験と平行してGPR30ノックアウトマウスの作成にも着手している。本研究計画が順調に進行し、GPR30 のin vivoでの解析結果も含めて論文にまとめることを目標としている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要3)GPR30調節タンパクの同定と機能解析(RAMPsによるGPR30の細胞内局在・シグナル伝達への影響の解析)において、RAMPsの共発現は、GPR30の細胞内局在とシグナル伝達へ影響を与えなかった。そこで、未知の新規GPR30調節タンパクが存在する可能性を考え、平成28年度は、高親和性抗FLAG抗体2H8と磁気ビーズを用いた免疫沈降と質量分析により、新規GPR30調節タンパクを同定する予定である。更に、同定したGPR30調節タンパクを過剰発現あるいはノックアウト・ノックダウンすることにより、GPR30の細胞内局在とシグナル伝達が変化するか否かを解析する。 4)in vivo解析のための遺伝子改変動物の作成: 本研究のその後の展開として、GPR30調節タンパクがGPR30のシグナル伝達に与える影響や、雌雄の表現型に与える影響をin vivoで解析する予定である。そこで平成27年度より、まず、CRISPR/Cas9システムを用いてGPR30ノックアウトマウスの作成を開始した。ノックアウトマウスの作成は順調に進行しており、今後は、心血管系の機能解析を行うことを予定している。
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