研究課題/領域番号 |
15J12429
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小清水 正樹 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | リアノイド / 網羅的全合成 / 天然物化学 / 構造訂正 / 立体化学の決定 |
研究実績の概要 |
リアノイド類は、複雑に縮環した5環性骨格上に多数のヒドロキシ基を有する。共通した炭素骨格を持つが、酸化度は様々であり、そのため生物活性は多岐に渡る。我々は、リアノイド類の網羅的合成法の確立を目指し合成研究を行っている。本年度は、リアノドールの合成法を基盤として、リアノイド類に含まれるリアノダンジテルペンの統一的全合成の確立を目指した。リアノダンジテルペンは、共通する5環性炭素骨格を有するが、C2,3位の構造が異なる。そのため、構造的相違点であるC2,3位を合成終盤で官能基化すれば統一的全合成が可能であると予想した。そこで、当研究室で達成されたリアノドール全合成における合成中間体を共通中間体に設定した。中間体のMOM保護後、LiBH4を作用させることで、C3位ケトンを立体選択的にヒドリド還元しC3位立体化学を構築した。酸化でC2位ケトン構築後、ケトンへの立体選択的なイソプロペニル基導入した。最後にTMS基、アセトニド基、MOM基、ベンジル基を順次除去することで3-epi-リアノドールの全合成を達成した。3-epi-リアノドールの合成中間体にヨウ化サマリウムを作用させC3位酸素官能基を還元的に除去した。このケトンへ、シクロプロピル基もしくはクロチル基を導入した後、様々な官能基変換を行うことでシンゼイラノールとシンカッシオールAおよびBの全合成を実現した。また中間体から結晶性化合物へ誘導後、単結晶X線構造解析を行い未決定であったシンカッシオールAおよびBのC13位立体化学を明らかにした。また、合成したシンカッシオールAと別途単離報告されたシンナカソールの各種スペクトルを比較した結果、同一化合物であることが明らかとなり、シンナカソールの提唱構造を訂正した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
リアノイド類の精密構造活性相関研究に向けリアノイド類の網羅的合成法開発を行った。リアノドールの合成中間体である5環性化合物を共通の合成中間体として設定した。リアノダンジテルペンの構造的相違点であるC2,C3位を位置・立体・化学選択的な化学反応を駆使し、様々な変換を行った。その結果として3-epi-リアノドール、シンゼイラノール、シンカッシオールB、シンカッシオールAの統一的全合成を実現した。リアノイド類の統一的全合成は前例がなく、合成化学的意義は極めて大きいものである。また、全合成を達成することで、2つの天然物の提唱構造訂正と、未決定であったC13位立体化学を決定できた。リアノダンジテルペンの統一的全合成を達成できたので、目的である精密構造活性相関への展開が現実的となった。本成果は、論文として報告し高い評価を受け、有機合成化学のみならず、生命科学、神経科学、医学などへ大きな貢献をすることが出来る極めて重要な成果ある。
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今後の研究の推進方策 |
リアノイド類は、リアノダンジテルペンとイソリアノダンジテルペンの2種に大別される。昨年度の研究によりリアノダンジテルペンの網羅的合成は実現された。今後はイソリアノダンジテルペンの合成研究を遂行する。両者は、炭素骨格構造が類似しているため、リアノダン合成の戦略をイソリアノダン合成へ応用できると計画した。これまでの知見を最大限活用しイソリアノダンジテルペンの合成法を確立する。合成法を確立できたら、リアノダン骨格またはイソリアノダン骨格を持つ、様々な人工誘導体を化学合成により供給し、精密構造活性相関研究へ展開する。活性の強い分子プローブを創製し、未解明な点の多い、リアノジン受容体の機能解明に貢献する。
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