古典的な求核的有機金属種は、還元力の強い金属を等量用いて有機ハロゲン化合物から生成する方法がほとんどであるが、この手法はハロゲンなどの反応性の高い官能基の事前導入の必要性、有機金属種の高い反応性による副反応、プロトン性官能基に対する受容性の欠如といった問題点を抱えている。このため、還元力の強い金属を用いることなく、高い化学選択性をもつ求核的有機金属種を反応系中で触媒的に生成する新手法の開発が望まれ る。 このような方法として求核剤の不飽和結合への分子間付加反応を起点とする求核的有機金属種の触媒的生成を提案する。具体的にはCu-X反応剤の炭素-炭素不飽和結合への分子間求核付加を起点として、高い化学選択性と求核性を併せもつビニル銅種の触媒的発生法を開発し、これを連続反応に組み込むことで、複雑な構造を有する生物活性物質群の合成簡略化を実現しうる触媒反応を開拓することを目的とすることとした。 昨年度に進行したスチレン、ピナコールジボラン、イミンの三成分反応を適切な配位子を設定することによって、ジアステレオ選択性の良好な、ひいてはエナンチオ選択性の改善を目指した。キラルな2座ホスフィン配位子やキラルなNHC配位子を中心に配位子を検討していった結果、スチレン、ピナコールジボラン、イミンの三成分反応を達成した。また配位子の変更によって立体異性がスイッチするジアステレオダイバージェント法への展開も可能となることを見いだした。現在本成果について論文を投稿中である。
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