研究課題/領域番号 |
15J12458
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
萩原 浩一 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 全合成 / ジテルペンアルカロイド / ラジカル反応 |
研究実績の概要 |
プベルリンCおよびタラチサミンはF環の縮環様式が異なるものの、ともに高度に縮環した6環性骨格上に、多数の連続する不斉中心を有するC19ジテルペンアルカロイドである。多くのC19ジテルペンアルカロイドはイオンチャネル作用分子として知られており、タラチサミンは電位依存性カリウムチャネル選択的阻害活性を有する。プベルリンCの生物活性は未報告だが、同様のイオンチャネル作用を有することが期待される。しかし、その複雑な構造のため、C19ジテルペンアルカロイドの全合成は4例にとどまっており、いずれも多くの工程数を必要とする。従って、C19ジテルペンアルカロイドの効率的な合成法の確立は、有機合成化学的に極めて挑戦的かつ重要な課題である。本研究は、プベルリンC の効率的な全合成およびプベルリンCの骨格変換によるタラチサミンの全合成を通じた、縮環様式の異なるC19ジテルペンアルカロイドの統一的合成法の確立を目的とした。 本年度は、モデル化合物の合成により、6環性骨格構築法を確立し、さらに、プベルリンCの全合成に向けて、適切な酸素官能基を有する基質の合成を行った。まず、タンデムラジカル環化と向山アルドール反応を鍵とし、プベルリンCと同一の複雑6環性骨格を有するモデル化合物の合成を18工程で達成した。これは、プベルリンCの6環性骨格を合成化学的に構築した初の例である。本成果は、Chemical Science誌において発表した。さらに、共同研究者の見出した知見に基づき、モデル研究においては導入していなかった酸素官能基を有する2環性アミンを合成した。合成した2環性化合物に対して、本年度確立した骨格構築法を利用することでプベルリンCの全合成が可能になると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、まず、プベルリンCの6環性骨格構築法を確立した。具体的には、タンデムラジカル環化と向山アルドール反応を鍵とし、プベルリンCと同一の複雑6環性骨格を有するモデル化合物の合成を18工程で達成した。5環性化合物から残るD環の構築は極めて困難であり、当初計画していた反応では達成できなかった。しかし、検討の結果、向山アルドール反応を用いることで所望の6環性化合物を得ることができた。 また、共同研究者の見出した知見に基づき、酸素官能基を導入した2環性アミンの合成も行った。収率や工程数に課題は残すものの、確立した骨格構築法をこの2環性アミンに適用することで、プベルリンCが全合成できると期待している。 以上のように、当初計画していた段階まで研究を進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度確立した骨格構築法を、合成した2環性アミンに適用することで、プベルリンCの全合成を行う。モデル研究とは異なり、多数の酸素官能基が存在するので、基質の反応性がモデル研究の際とは異なる場合が十分に想定される。その場合は、酸素官能基の保護基や用いる試薬の変更など、適宜工夫することでプベルリンCの全合成を達成する。 プベルリンCの全合成達成後は当初の計画に従い、骨格変換を行い、タラチサミンの全合成を行う予定である。
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