• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

骨吸収抑制作用と骨形成促進作用を併せ持つ新規骨粗鬆症治療薬の臨床応用に向けた検証

研究課題

研究課題/領域番号 15J12476
研究機関東京大学

研究代表者

林 円香  東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2017-03-31
キーワードRANKL逆シグナル / 全長ヒトIgG2 / バイファンクショナル / 親和性成熟
研究実績の概要

ヒトRANKL細胞外ドメインに結合し、骨芽細胞内にRANKL逆シグナルを入力する抗体分子を取得するため、ヒトRANKL細胞外ドメイン分子に対し、単鎖抗体フラグメント(scFv)提示ファージライブラリーを反応させることで、ヒトRANKL細胞外ドメインに選択的に結合するscFvを取得した。各scFvに関して、HEK293FT細胞をホスト細胞として抗体タンパク質を産生させ、protein Aビーズを用いて精製した。まず、ヒトRANKL細胞外ドメインに対するIgG2の親和性をELISA手法によって評価した。また、RANKL逆シグナル入力能の評価系として、ヒト骨肉腫細胞SaOS2細胞にヒトRANKL分子を恒常的に発現させた細胞株をヒト骨芽細胞のモデルとして用い、抗体を添加して一定時間後に細胞を回収・溶解し、PI3K-Akt-mTORC1の活性化を、イムノブロット手法によって評価した。これらの検討で得られた結合特性曲線および逆シグナル入力活性の相関をプロットし、RANKL細胞外ドメインに対する親和性が低い濃度から逆シグナル入力能を有しているIgG2を選択した。次に、得られたIgG2に関して、マウス骨髄細胞のモデル細胞であるRAW264.1細胞を用い、可溶性ヒトRANKL分子を添加して成熟破骨細胞を分化誘導する系において、各IgG2の、RANKLシグナル遮断による成熟破骨細胞形成抑制能を確認した。以上の結果から、in vitroにおいて、バイファンクショナルな活性を有するIgG2として3種類が同定された。
次に、同定されたクローンに関して、H鎖およびL鎖の相補性決定領域(CDR1)6塩基を、それぞれランダム化したscFvを提示するファージライブラリーを構築し、より低濃度のヒトRANKL細胞外ドメイン分子を用いてスクリーニングすることで、親和性の向上したクローンの取得を試みた。結果、ヒトRANKL細胞外ドメインに対してより高親和性を示すとともに、バイファンクショナルな活性を維持しているクローンを同定することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ファージディスプレイの手法を用い、scFvの状態で、ヒトRANKL細胞外ドメインに対する親和性を有するクローンを20種類取得した。各scFvを全長ヒトIgG2に組み換え、全長IgG2の状態で、RANKL細胞外ドメインに対する親和性を有するとともに、RANKL逆シグナル入力能およびRANKLシグナル遮断能を併せ持つクローンを3種類選択した。また、各クローンについて、CDR1領域をランダム化したscFvライブラリーを作製し、親和性成熟を行うことにより、scFvの状態で親和性の向上したクローンを取得した。それらをIgG2に組み換え、同様の活性評価を行った結果、高親和性を有するとともに、バイファンクショナルな活性を維持しているクローンとして、1種類の母核クローン由来の2種類を同定することに成功した。
以上の検討より、昨年度においては、in vitroにおいてバイファンクショナルな活性を有し、今後のin vivoの検討において使用可能なIgG2を取得することができた。

今後の研究の推進方策

これまでに選択した抗体を用い、in vivoの検討に向けて、以下の検討を実施する。
まず、抗体の大量産生系を構築するため、抗体医薬産生時のホスト細胞として汎用されているCHO-DG44細胞を用い、目的抗体を恒常的に高発現する細胞株を取得する。また、本方法で作製したIgG2に関して、in vitroにおけるバイファンクショナルな活性が維持されていることを確認する。
次に、in vivoの検討にあたり、マウスRANKLの遺伝子座にヒトRANKLを挿入したRANKLノックインマウスを作出し、生体レベルにおける骨代謝回転への効果、および骨粗鬆症様病態に対する改善効果を評価する。このマウスに、候補抗体、および比較対象として、既存の骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネート製剤、デノスマブあるいはパラチロイドホルモン製剤を投与し、その後経時的に骨形成・骨吸収の指標となる血清マーカーを測定し、骨代謝回転に対する影響を評価する。また、カルセインおよびデメクロサイクリンの二重投与によって石灰化前線のラベル化を行った後に椎骨および大腿骨を採取し、骨形態計測を行って骨代謝回転に対する影響を評価する。また、二重X線吸収測定法を用いた海綿骨・皮質骨骨量・骨密度の測定、マイクロCTを用いた骨微細構造の計測も行う。さらに、このマウスに対して卵巣摘出処置を施すことで閉経後骨粗鬆症モデルとし、上述と同様の手法で候補抗体を用いた治療効果の評価を行う。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 骨芽細胞におけるRANKL逆シグナルの役割2015

    • 著者名/発表者名
      本間雅、林円香、池淵祐樹、青木重樹、菅森泰隆、青木和広、鈴木洋史
    • 学会等名
      第33回日本骨代謝学会学術集会
    • 発表場所
      京王プラザホテル(東京都・新宿区)
    • 年月日
      2015-07-23 – 2015-07-25
  • [備考] 東京大学医学部附属病院薬剤部試験研究室/臨床薬物動態学教室

    • URL

      http://plaza.umin.ac.jp/~todaiyak/

URL: 

公開日: 2016-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi