研究課題
自然免疫に関わるToll様受容体(TLR)の中で、TLR7とTLR8は一本鎖RNA (ssRNA)を認識しており、様々なウィルス感染症や自己免疫疾患に関与している。本年度は、TLR8/ssRNA複合体のX線結晶構造解析に成功し、TLR8のssRNA認識機構を解明した (Tanji et al., Nat. Struct. Mol. Biol., 2015) 。TLR8/ssRNA複合体の構造解析を行った結果、TLR8は活性化型の2量体を形成しており、2量体界面に存在する合成低分子リガンド結合部位 (1st site) にウリジンが、リング型構造の内側に存在する結合部位 (2nd site) にUGの配列を有するジヌクレオチドが、それぞれ結合していることが明らかになった。先行研究より、1st siteにリガンドが結合するとTLR8の活性化型2量体への構造変化を引き起こすことが示されており、TLR8のssRNA認識における真のリガンドはウリジンだと考えた。実際に、TLR8/ウリジン複合体の結晶構造解析の結果、TLR8は活性化型2量体を形成していることが明らかになった。さらに、等温滴定カロリメトリー法を用いて、グアノシン、アデノシン、シチジン、ウリジン、チミジンの各モノヌクレオシドの中でウリジンが最も強くTLR8に結合することを示した。また、ssRNAの存在下では、TLR8に対するウリジンの結合が増強することを明らかにした。これまではRNAがTLR8を活性化すると考えられていたが、本研究結果によって、実際はRNAの分解産物であるウリジンとssRNAを同時に認識して活性化されるという新規機構が解明された。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、TLR8とssRNAの結晶構造解析に成功しており、論文として発表した。さらに、TLR8と種々のリガンドとの複合体構造解析に成功しており、共著者として論文を発表している。
TLR8には、活性化に関わっているとされる挿入ループが存在する。今後は、この挿入ループによる活性化制御について構造生物学的な知見を得ることを目指し、挿入ループ部位の変異体を作成してX線結晶構造解析および性状解析を行う。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
Nat. Struct. Mol. Biol.
巻: 22 ページ: 109~115
10.1038/nsmb.2943
Nature
巻: 520 ページ: 702~705
0.1038/nature14138
PLoS One
巻: 10 ページ: e0134640
10.1371/journal.pone.0134640
J. Med. Chem.
巻: 58 ページ: 7833~7849
10.1021/acs.jmedchem.5b01087