研究課題
TLR7/8/9の活性化には、分子内の挿入ループ (Z-loop) の切断が必要であることが先行研究により示されている。これまで構造解析が達成されたTLR8は野生型であり、S2細胞で発現させた後に既にZ-loopが切断されていたため、Z-loopの機能は不明だった。そこでアミノ酸残基の変異を導入することでZ-loop未切断型TLR8を作成し、構造解析を行った (Tanji et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2016)。その結果、Z-loop未切断型TLR8は単量体であり、2量体界面に未切断のZ-loopが観察された。本研究により、未切断のZ-loopがTLR8の2量体化を阻害していることを構造生物学的に明らかにした。また、Z-loop未切断型TLR8は溶液中でも単量体であり、低分子リガンドはZ-loop未切断型TLR8に結合せず活性化型2量体への構造変化が起こらないこと、つまりZ-loop未切断型TLR8では2量体界面のリガンド結合部位(1st site)が機能せず生体内ではシグナルが伝達しないであろうことを見出した。一方で、Z-loop未切断型TLR8に対してRNAは結合することから、Z-loopとリング型構造の間のRNA結合部位(2nd site)は機能していることを見出した。本研究は、Z-loopの切断によるTLR7/8/9の活性化機構の解明に寄与し、生物学的に意義があると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、TLR8のZ-loop未切断体の結晶構造解析に成功しており、論文として発表した。
これまで構造が明らかになったTLRはほとんどが細胞外ドメインであり、TLR全長体の構造はほとんど明らかになっていない。今後はTLR全長体の構造解析に取り組み、実際の活性化機構を明らかにする。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 113 ページ: 3012, 3017
10.1073/pnas.1516000113
Immunity
巻: 45 ページ: 737, 748
10.1016/j.immuni.2016.09.011