• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

触覚誘導性視覚マスキングの神経基盤―自閉症における神経接続不全との関連性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15J12599
研究機関国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)

研究代表者

井手 正和  国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2015-04-24 – 2018-03-31
キーワード知覚抑制 / 視覚 / 触覚 / 感覚間相互作用 / 自閉症スペクトラム / fMRI
研究実績の概要

従来、異なる感覚に対して同時に刺激を提示した時、一方の感覚入力がもう一方の感覚の知覚を強めるような促進効果が報告されてきた。しかし、マウスを対象とした実験では、触覚や聴覚への刺激が、一次視覚野の神経活動を抑制するような異種感覚間の直接的な相互作用が報告されている。我々の先行研究では、ヒトでも触覚刺激の提示によって視覚刺激の傾きの弁別成績が低下することを発見した(Touch-induced visual suppression: TIVS)。この結果は、異なる感覚から同時に入力を受ける頭頂連合野の細胞内および複数の脳領域間の相互作用に基づいて、知覚の抑制が生じる可能性を示唆する。一方、自閉症スペクトラム障害(autism-spectrum disorders: ASD)者では、異なる脳領域間の神経接続が希薄であることが報告されている。以上の知見に基づき、本研究では、異なる感覚間で生じる知覚抑制効果の神経基盤と、この効果に関するASDの方の特徴を明らかにする。本年度は、fMRIを用いて知覚抑制効果が生じている際の脳活動を計測した。その結果、この課題条件下では、視覚領域、二次体性感覚野、小脳、感覚連合野、紡錘上回、視床等の活動低下が見られた。次に、参加者を、ベースライン(触覚刺激無し)の課題成績が基準(50%)を超えていたか否かで群分けした。基準値を超えた参加者の脳活動と課題成績との関連性を分析したところ、二次体性感覚野と小脳の活動が高いほど、視覚刺激に関する弁別成績が低下することが分かった。以上の結果から、触覚刺激による視知覚の抑制には、皮質及び皮質下レベルの複数の脳領域の活動の抑制及び促進が関与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、触覚刺激を提示した際に生じる視覚刺激に関する知覚の抑制効果(TIVS)の神経基盤を特定するため、fMRI実験を実施した。これまで、実験室環境で実施してきた課題をMRI実験環境で再現するため、実験装置、プログラム、課題の改変を行った。実験結果からは、知覚抑制効果には一次感覚野や頭頂連合野を含む皮質及び皮質下の複数の脳領域の活動が関与していることが明らかになった。この研究成果は既に論文化し、投稿を済ませた。この知見を基に、複数の脳領域間の同期活動が低下していることが報告されているASD者の感覚間相互作用の特性とその神経基盤を明らかにしていく。

今後の研究の推進方策

これまでの研究から、触覚刺激による視知覚の抑制効果(TIVS)には、一次感覚野や頭頂連合野及び皮質下の複数の脳領域の活動が関与することが明らかになった。頭頂連合野には、手に触れることと、手周辺の一定範囲に光を提示することによってともに活動する細胞群が存在する。すなわち、この細胞群は、視覚と触覚という異なる感覚間で刺激入力を受ける空間範囲(受容野)を共有している。このことは、視覚と触覚の相互作用に基づくTIVSは、手周辺の一定範囲で強く生じる可能性を示唆する。今後は、知覚抑制効果が生じる空間範囲を検討することで、特に受容野の特徴に着目してこの現象の神経基盤に迫る。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Crossmodal perceptual masking effect.2016

    • 著者名/発表者名
      Hidaka, S. & Ide, M.
    • 学会等名
      31th International Conference of Psychology
    • 発表場所
      Pacifico Yokohama, Yokohama, Japan
    • 年月日
      2016-07-24 – 2016-07-29
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2016-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi