研究課題
今年度は、昨年度に引き続きタンパク質の機能を制御し得る光機能性分子の開発を進めた。具体的には(1)光照射により結合・解離を制御できるタンパク質タグ及び(2)光照射に応じて分子の電荷状態を変化させる分子の合成と物性の評価に注力した。(1)に関しては昨年度合成したAzoTMPのeDHFRとの結合・解離を生細胞中で評価した。まず蛍光色素SiRと結合した、AzoTMP-SiR及びTMP-SiRをそれぞれ合成した。次に細胞の内膜に局在するCAAXタンパク質モチーフとeDHFRをHEK細胞に共発現した。この細胞にリガンドを添加し、洗浄後、蛍光顕微鏡で観察した。AzoTMP-SiRは細胞膜を透過し、細胞の内膜に局在する様子が観察できた。次に、紫外光の照射により内膜から解離し、細胞質に拡散していく様子が観測できるかを試した。紫外光を照射した結果、膜状の蛍光強度の減少が見られたが、TMP-SiRと優位な差は見られなかった。これは、解離定数の変化が不十分であるといったことが原因と考えられ、タグタンパク質の改変や基質分子への嵩高い置換基の導入などにより、より大きい解離定数の変化を示すペアの開発が必要である。(2)においては、シアニン類に分子内求核基を導入し、温和な条件下で光応答性を示す分子の開発を試みた。Cy5又はクマリン-シアニンハイブリッド(CC)を骨格として選択し、分子内求核基を導入した分子を設計、合成した。まずpHによる影響を確認した結果、Cy5誘導体では吸光度が一定であるのに対して、CC誘導体では中性~弱塩基性で吸光度が低下する現象が確認された。さらに、インドール環部位にカルボン酸、アミノ基、アミド基等を導入することでこれらのpH応答性が大きく変化することを明らかにした。これらの結果よりCC誘導体がペプチダーゼ等を検出する蛍光プローブの新規母核として有用であることが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Chemical Communications
巻: 54 ページ: 102-105
10.1039/C7CC07783A