研究課題/領域番号 |
15J40005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河野 まひる 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ホスファチジルセリン / マクロファージ / アポトーシス |
研究実績の概要 |
本研究課題では、腫瘍細胞そのものや、腫瘍細胞が放出するエクソソーム表面に露出するホスファチジルセリン(PS)に着目し、露出した PS を介してマクロファージ活性化が調節され、癌悪液質の発症に関わる経路を検討する。そこで、露出した PS とマクロファージ活性化の関連を検討するため、本年度は生体内で PS を阻害する手法として、MFG-E8 D89E 変異タンパク、および Xkr8 ノックアウトマウスを用いた。 MFG-E8 は分泌蛋白質であり、C末端側で PS と強く結合する一方、N末端側でマクロファージ上のインテグリンとも結合し、マクロファージによるアポトーシス細胞やエクソソームの取り込みを促進する。MFG-E8 D89E 変異タンパクはドミナントネガティブ変異体として機能することより、PS をマスクする目的で MFG-E8 変異タンパクを用いることとした。作製した MFG-E8 D89E 変異タンパクを、マウスに経静脈投与し、リンパ組織の免疫細胞の組成をフローサイトメトリーで検討した。現在のところ、リンパ球のプロファイルやマクロファージの組成に明らかな変化を認めていないが、投与スケジュールや評価時期を調整し検討している。 Xkr8 はアポトーシス細胞において、PS の露出を実行するタンパク質(スクランブラーゼ)として受け入れ研究室で同定された分子である。まず、Xkr8 ノックアウトによりアポトーシス細胞の PS 露出が阻害されるか検証した。ノックマウスの脾臓から T細胞を採取し、Bcl-2 阻害薬(ABT-737)によりアポトーシスを誘導すると、野生型マウス由来の T細胞と比較して、PS 露出が遅れることを確認した(AnnexinV-PI assay)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はマクロファージ活性化の評価には至らなかった。しかし、生体内で PS を阻害する手法を検討し、MFG-E8 D89E 変異タンパク、および Xkr8 ノックアウトマウスを用いる実験系について確立できた点で、研究の準備段階を着実に進展させられたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Xkr8 ノックアウトにより PS 露出が阻害されたアポトーシス細胞を用いた、マクロファージの貪食実験を計画しており、PS 阻害がマクロファージの貪食、ひいては活性化に与える影響を検討する。また、MFG-E8 変異タンパク投与や、Xkr8 ノックアウトによるPS阻害の生理的意義について検討するため、マウスの表現型解析を行う。
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