研究課題/領域番号 |
15J40037
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
大坪 瑶子 基礎生物学研究所, 細胞応答研究室, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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キーワード | 分裂酵母 / 栄養源認識 / 有性生殖開始 / TORキナーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では、栄養源認識と有性生殖開始をつなぐシグナル伝達経路の分子機構の解明を目標として、分裂酵母を用いて、真核生物に広く保存されたTORキナーゼ経路の解析を進めている。 これまでに、有性生殖開始に関わる転写因子Ste11が、Tor2キナーゼによって2カ所リン酸化されることを明らかにしている。この部位をアラニン置換した非リン酸化型の分裂酵母変異株を作製し、Ste11の局在や接合率を野生型株と比較したが、大きな差異は見つからなかった。 これまでの研究で、Tor2キナーゼの変異株と同様に、栄養源が豊富な環境でも有性生殖を開始してしまう変異株を複数取得していた。これらの変異株をhmt (hyper mating and temperature sensitive) 変異株と名付けて解析を行っている。hmt変異株の原因遺伝子の多くがtRNA関連因子だったことから、窒素源枯渇時のシグナル伝達経路にtRNA自体が重要な役割を担っている可能性が出てきた。窒素源枯渇時にtRNAの量に変化が起きているか検討するために、いくつかのtRNAの発現量の変化をノザンブロットにより調べたところ、tRNAの前駆体の発現量が、窒素源枯渇後に大きく減少していることがわかった。さらに、窒素源枯渇時のtRNA前駆体量の減少におけるTor2キナーゼの関与を検討するため、窒素源枯渇時でも活性の低下が見られない活性化型tor2変異体株を用いて観察を行った。その結果、活性化型tor2変異体株でも野生型株と同様に、窒素源枯渇時のtRNA前駆体の発現量の減少が見られることが明らかとなった。よって、この現象がTor2の上流で起きていることが強く示唆される。さらに、前駆体tRNAを過剰発現した分裂酵母細胞では、窒素源枯渇時のTor2キナーゼの不活性化が阻害されており、有性生殖開始も抑圧されていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、第二子出産による産休、育児休暇取得、また復帰後も授乳に通いながら実験を行っているために、全ての実験を計画通りに進めることができなかった。Ste11がTor2キナーゼによるリン酸化によってどのような制御を受けているのか、非リン酸化型の表現型の観察からは明らかにすることができなかった。また、Ste11以外の新規標的因子の探索、および、Tor2キナーゼから構成されるTOR複合体1(TORC1)活性を持つ最小単位の複合体の構築等に関しての実験は、当初の計画通りには進めることができなかった。tRNAとTOR経路の解析に関しては、tRNA前駆体が窒素源認識機構の一員としてTORC1の上流で働いているという当初想定していなかった結果が得られたので、現在これらの結果をまとめた論文の投稿にむけて作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、Ste11がリン酸化によってどのような制御を受けているのかを検討する。また、TORC1の新規標的の候補となる性分化に関わる因子群の組換えタンパク質を作製し、TORC1の新規基質となり得るかをin vitro kinase assayによって調べる。特に、hmt変異株の原因遺伝子としても単離されていたPat1キナーゼに注目して解析を行う。さらに、TORC1構成因子の組換えタンパク質も作製し、TORC1活性を持つ最小単位の複合体の構築を試みる。 また、tRNA前駆体がTORC1経路にどのように作用して有性生殖開始を制御しているのか、より詳細に検討する。
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