地震波減衰構造推定のプログラムの開発を行い、九州地方の地殻の2次元地震波減衰構造の推定を行った。この手法は、MLTW法にもとづいており、散乱減衰と内部減衰を分離して推定した。データとして、九州大学地震火山観測研究センターの震源カタログおよび波形データを使用した。解析に用いた期間は、1995年から2015年までの20年間分で、空間分解能は10-20 kmである。その結果、テクトニクスと対応した空間分布を得た。具体的には、活火山および一部の活断層周辺で、散乱減衰および内部減衰ともに高減衰領域である。また、次元地震波減衰構造と地震発生層下限深度との関係について検討した。その結果、地震発生層下限深度の浅い領域において散乱減衰および内部減衰ともに大きい、また、その傾向は活火山周辺域でより顕著である、という結果を得た。
4月に2016年熊本地震が発生した。当初の見込み以上のデータが蓄積された。また、震源域における3次元元地震波速度構造の推定を行った。手法として、double-difference tomography法を使用した。解析には熊本地震震源域周囲の50 kmの地震(1996年1月から2016年6月まで、m > 2.5、深さ< 30 km)を使用した。解析対象領域は、本震の震源周辺25 km、グリッド間隔は対象領域中央で水平方向に5 km、深さ方向に2.5 kmとした。その結果、解析対象領域内において、主要な二つの地震の震源や余震の震源は、P波S波ともに高速度領域に位置していることが明らかになった。またこの高速度領域は、震源域では周囲と比較してより深部まで達していることがわかった。なお、チェッカーボード解像度テストにより、熊本地震震源域において深さ約15 km までの3次元地震波速度構造が回復された。
|