研究実績の概要 |
これまでに、九州地方における地殻の二次元地震波減衰(散乱減衰・内部減衰)構造を10 km の空間分解能で推定した。その結果、テクトニクスと対応する空間変化が得られた。火山地域および一部の活断層帯では散乱減衰・内部減衰ともに大きいことが明らかになった。また、地震発生層下限深度[Matsumoto et al., 2016]との比較により、以下のような関係が明らかになった。(1)地震発生層下限深度が浅いほど散乱減衰・内部減衰ともに大きい。(2)活火山周辺ではより散乱減衰が卓越し、活断層周辺ではより内部減衰が卓越する。2016年熊本地震の震源断層である布田川・日奈久断層帯もこのような領域に属している。これらの結果は2017年地球惑星科学連合大会にてポスター発表した。 また、2016年熊本地震震源域の3次元地震波速度構造の推定を行い、(1)震源域は九州の平均的な速度構造と比較して相対的に高速度かつ低Vp/Vsである、(2)震源域の地震発生層の地震波速度はVp=6.0 km/sかつVs=3.5 km/s、(3)本震滑りの大きかった領域は地震発生層とその上部の表層であり阿蘇周辺の低速度領域で本震滑りが停止した、など重要な知見が得られた。これらの結果をまとめて日本地震学会2017年秋季大会で発表した。また、国際誌 (Geophys. Res. Lett. )に投稿し、掲載された。 以上のとおり、ほぼ当初の予定どおり研究を遂行した。
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