研究実績の概要 |
九州地方の地震波減衰構造の推定および地震発生層との関係解明に関わる研究を行った。地震波減衰には、非弾性による内部減衰とランダムな不均質性による散乱減衰とがあり、いずれも媒質の物性を特徴づけるパラメタで両者を分離推定することが重要であるが、これまで3次元構造を推定することは困難であった。今年度は、地震波散乱減衰・地震波内部減衰の3次元構造を推定する手法を新たに開発した。 この手法は、S波とそのコーダ波のMS エンベロープを輻射伝達理論の近似解析解[Paasschens, 1997]によりフィッティッティングし、散乱減衰・内部減衰を各エンベロープについて測定し、それらをモンテカルロシミュレーション[Yoshimoto,2000]によって計算した空間重みに応じて対象領域に配置されたブロックに配分し、散乱減衰・内部減衰の3次元構造をマッピングする。 本研究で開発した手法を九州地方の地殻に適用し、深さ15 kmまで、高い空間分解能(ブロックサイズは水平方向10 km 、鉛直方向5 km)で3次元構造を推定した。その結果、以下のことが明らかになった。(1)火山地域および活断層帯では散乱減衰・内部減衰ともに大きい。(2)散乱減衰・内部減衰の大きい地域では、地震発生層下限深度が浅い。(3)散乱減衰の強度は深さとともに減衰するが、内部減衰の強度は深さにあまり依存しない(これは本研究により初めて明らかになった特徴である)。 以上の結果を2018年度地球惑星科学連合大会でポスター発表した。
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