研究課題
7週令のGIP-GFPヘテロマウスを通常食群と高脂肪食群に分け、有意な体重差の生じない5日間という短期的な食事負荷を行った。両食事負荷後、体重差のない非肥満状態における耐糖能、GIP分泌能を経口ブドウ糖負荷試験または経口脂質負荷試験にて評価した。経口ブドウ糖負荷試験において、通常食GIP-GFPヘテロマウス群に比較して高脂肪食GIP-GFPヘテロマウス群で負荷後の血糖値とインスリン値の有意な上昇を認めたが、GIP値は差を認めなかった。一方で、経口脂質負荷試験において、通常食負荷GIP-GFPヘテロマウス群に比較して高脂肪食負荷GIP-GFPヘテロマウス群で負荷後のGIP分泌の有意な増加を認めた。免疫組織染色にて、腸管形態およびK細胞数を計測したところ、両食事群において腸管形態およびK細胞数に変化を認めなかった。両食事負荷後GIP-GFPマウスK細胞を分離回収し、K細胞内mRNA発現を評価した。通常食群および高脂肪食群K細胞において非K細胞に比較して有意なGIP mRNA発現を確認し、高脂肪食群K細胞において通常食群K細胞に比較して有意なGIP mRNA発現の増加を認めた。同じくインクレチンであるGLP-1についても同様の傾向であった。既報にてGIP遺伝子発現を調節するとされている転写因子Pdx1やRfx6についても評価したが、通常食群K細胞と高脂肪食群K細胞において差を認めなかった。次に、脂肪酸摂取・肥満状態の感知・細胞応答に関連するとされている遺伝子群についても評価したところ、高脂肪食群K細胞にて通常食群K細胞に比較してLiver X Receptor (LXR)βの有意な増加を確認した。また、遺伝子発現プロファイルをマイクロアレイによっても解析し、通常食群K細胞に比較して高脂肪食群K細胞に有意な変化を認める因子として65の候補遺伝子を同定した。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、GIP-GFPマウスに短期的な通常食または高脂肪食負荷を行い、両食事負荷後GIP-GFPマウスK細胞内の遺伝子発現をマイクロアレイにより解析し、Rfx6の活性調節機構に関与する因子を同定する計画であった。長期高脂肪食負荷肥満におけるK細胞では転写因子Rfx6の発現増加を認めたが、短期高脂肪食非肥満状態におけるK細胞ではRfx6遺伝子の発現に変化は無いことを確認した。しかし、短期高脂肪負荷による肥満準備状態において、K細胞内で発現変化する遺伝子を複数同定し得たので、今後は詳細な機能解析をマウス腸管内分泌腫瘍株によって検討していく予定である。また、在外研究によって細胞内リン酸化シグナル伝達解析の手技を獲得して今後にK細胞内におけるリン酸化シグナル評価を計画していることなどから、期待ほどではないがある程度の進展はあったと評価できる。
平成28年度までに得られた結果から、短期高脂肪食負荷によりK細胞における遺伝子発現が変化する複数の候補因子について、GIP遺伝子発現や合成分泌機構への関与をマウス腸管内分泌腫瘍株STC-1細胞にて評価していく予定である。また、28年度よりthe JSPS-ERC exchange schemeによりmTORシグナル伝達におけるS6K1の新規リン酸化基質を同定すべく研究を行っている。得られた知識や技術を用いてK細胞内リン酸化シグナル伝達の解析も行うことを予定している。
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