研究課題/領域番号 |
15J40094
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
平石 典子 東京医科歯科大学, 医歯学総合研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 歯質コラーゲン / リン酸モノマー / フラボノイド / 脱灰 / 再石灰 / 象牙質 / 固体NMR |
研究実績の概要 |
2.画面「研究実績の概要の入力最大1600バイト」で必要事項を入力して下さい。 有機質の保護が確立できれば、これを足場にしてう蝕脱灰部の再石灰化が有意に起こるとの仮説の基に、果皮および薄皮に多く含まれるフラバノン配糖体である天然フラボノイドであるへスぺリジンの、天然の抗酸化作用及び、架橋剤としてコラーゲンを保護効果に注目した。大阪大、理化学研究所との共同研究で、それぞれ、超遠心分析評価、NMR(核磁気共鳴)装置で解析を行った。結果、へスぺリジンの歯質有機質主成分のコラーゲンTypeIへの分子レベル相互作用が解明させた。本研究で結果は、国際英語論文 Dental Materials (Impact Factor: 3.931)に発表された。 また、歯質接着性材料の機能性及び機能的再石灰化促進剤の効果について、固体NMRを用いて評価を行った。歯科接着性モノマー修復システムの、歯質カルシウムとの反応性が分子、原子レベルでの観測結果を、2016年6月の国際歯科研究学会(ソウル、韓国)に口頭発表された。歯質ミネラルの固体NMR分析予備実験を行い、2次元の高分解能HETCOR 法で、スペクトルの情報量が増え、1次元スペクトルのみで分離できないピークが分離される。ハイドロキシアパタイトの構造で特徴のあるハイドロキシイオン(OH-)のシフトと比較し、歯質象牙質、エナメル質のミネラルと分析した。2次元HETCOR 法では、生体由来アパタイトは、(OH-)豊富な層と、組織水、中間水と思われる水が豊富な層に分かれることがわかった。後者の水が豊富な層は、コラーゲンの配置に近い層であると仮説を立て、歯質ミネラルは、脱灰されやすい層を、耐酸性のあるよりハイドロキシアパタイトに近い層が混在していると示唆した。2017年3月の国際歯科研究学会(San Francisco, CA. USA)に口頭発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体NMR のCP/MAS 法による天然歯質のミネラル評価は、歯科分野の中では画期的な手法であり、これまでのX線解析では得られない結晶構造の精密な分析が期待できる。歯質コラーゲンの保護、歯質の再石灰化に関して、固体NMRを使った評価を行い、興味深い結果が得られ始めた。歯質再石灰化促進剤効果の解明では、ミネラルの足場となるコラーゲンを保護する天然フラボノイド架橋剤の効果が解明されつつある。保存的歯科治療を確立させるべく、機能的再石灰化促進剤の効果および歯質接着性材料の機能性評価の観点から、固体NMRを用いて分子、原子レベルの分析を行っている。歯質ミネラルの固体NMR分析予備実験を行い、2次元の高分解能HETCOR 法で、スペクトルの情報量が増え、1次元スペクトルのみで分離できないピークが分離される。2次元の高分解能HETCOR 法で機能的再石灰化促進剤については、再石灰化を誘導する物質、特にハイドロキシアパタイト生成リン酸塩に注目して予備研究を進めている。 また、水中接着性ポリフェノール重合体の質接着材への応用は、疎水性の長鎖アルキル基を導入することにより耐水性が向上した。しかし、溶媒接着性、審美的観点から、口腔内で使用する場合さらなる改善が必要であり、国内外の研究者からの意見を反映させ、柔軟な対応をする所存である。 今年度は固体NMRでの条件設定確立、予備実験とその結果発表も終了しており、今後の課題に問題なく移行するとこができ、進捗状況は概ね順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
歯質再石灰化促進剤効果の解明では、ミネラルの足場となるコラーゲンを保護する天然フラボノイド架橋剤の効果が解明されつつあるが、フラボノイドの種類によって架橋効果が異なるのではと考えられる。また、コラーゲンがアパタイトの結晶成長を制御するとの報告があるが、天然フラボノイドのコラーゲンへの影響そして再石灰化への効果は大変興味深い。2次元の高分解能MQMAS/HETCOR 法では、アパタイトは、(OH-)豊富な層と、組織水、中間水と思われる水が豊富な層に分かれることがわかった。標準物質のハイドロキシアパタイトには、(OH-)豊富な層が多く見られ、水が豊富な層はわずかなシグナルのみであった。歯質象牙質、エナメル質を分析した結果、(OH-)豊富な層と、水が豊富な層が現れたため、後者の水が豊富な層は、有機質のコラーゲンマトリックスと関係があるのではと示唆され、さらなる分析を加える。 機能的再石灰化促進剤については、再石灰化を誘導する物質、(1)ハイドロキシアパタイト生成リン酸塩、(2)カルシウム結合型リン酸ポリマーに注目してさらに研究を進めたい。ハイドロキシアパタイト生成リン酸塩は、自己硬化型高濃度リン酸カルシウム配合セメントで、この硬化システムに注目したい。さらに、フッ素、抗菌作用(ナノサイズの銀)を付加し、機能性向上を目指した実験を試みたい。 歯科接着性リン酸モノマーの歯科修復物ジルコニアに対する反応性評価を検討する。ハイドロキシアパタイト吸着を考察する際に、ジルコニア表層への反応吸着を理解することは大変意義がある。近年、金属アレルギーなどの心配がないジルコニアによる歯科治療が注目されている。しかし、歯質への接着方法が確立おらず、リン酸基を持つ接ノマーによる表面処理が推奨されているものの、十分な接着力を持つ使用方法は今後検討する必要がある。
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