30年度は、接着歯学の分野では、リン酸エステル系モノマー効果により、界面への効果を化学結合有無の観点で分析を試みた。界面の樹脂含浸層直下に酸および塩基処理に抵抗する層(Acid-base resistant zone、ABRZ)形成が、電顕による形態学的観測により判明し、本研究で、MDP複合体の固体31P-NMR解析を行った結果、31P NMRスペクトルは酸処理前後でMDP-Ca塩のスペクトルに変化はなかったが、ピーク比(HAp/MDP-Ca塩)の減少が見られた。 この結果、MDP接着性モノマーはHApから溶出したCaを結合し、被接着体のHApよりも強い耐酸性が示唆できた。これら結果はMDPによるABRZの発現と相関していると考えられる考察を、国内学会で発表した。歯質再石灰化促進剤効果の解明については、むし歯予防で汎用されているフッ素の効果に加え、6種類の長期的イオン徐放によりバイオアクティブ効果が発現する機能性ガラスフィラ-素材に注視した。機能性フィラ-から除法するイオンは、フッ化物イオン、ナトリウム、ホウ酸、アルミニウム、ケイ酸、ストロンチウム各種イオンが確認されているが、ホウ酸イオンの抗菌性、抗真菌性テストへの取り組み、また、フッ化物イオン、ストロンチウムイオンのアパタイトへ格子への取り込みを、31P固体NMR、XRD(X線回折)にて行い、一部結果を国内学会で発表した。また、歯科分野において、抗菌作用、再石灰化作用、または歯石沈着予防効果があるであろう、金属イオンの、銀、亜鉛イオンの効果も上記の分析方法で取り組み、基礎報告をしている。以上得られる結果は平成31年度に、国際、国内学会、国際論文に発表準備中である。
|