研究課題
ミトコンドリアへの過剰なカルシウム取り込みの制御に関わるHAX-1-UCP3複合体に着目し、構造生物学的手法(X線回折実験)による構造機能相関研究を試みた。これまでに、HAX-1とUCP3の相互作用領域がそれぞれC末端側領域とミトコンドリア内腔に存在するループ2領域であること及び両者の結合にはカルシウムの存在が必須であること明らかにしている。また、HAX-1のC末端側領域に関しては、カルシウムと直接結合すること及びその結合により大きな構造変化(部分的なフォールディング)が誘起されることを明らかにした。これらの結果より、HAX-1のカルシウム結合を介した大きな立体構造変化がミトコンドリア内のカルシウム濃度上昇の感知とUCP3との結合に関与している可能性が示唆された。さらに、この複合体が如何にしてカルシウムの取り込み制御をしているかを明らかにすることを目的とし、今年度も昨年度と同様に、X線回折法による複合体の構造解析を試みた。特に、HAX-1のC末端側領域の膜結合性を考慮して、膜タンパク質の変性を防ぐ脂質キュービック相(LCP)法等の膜タンパク質に適した結晶化方法を用いて、網羅的な結晶化を行った。その結果、いくつかの条件で結晶が得られた。得られた全ての結晶のX線回折実験を行った結果、ほとんどの結晶は塩由来のものであることが判明したが、一つ条件だけわずかな回折点が得られた。現在、この条件をベースとし、結晶化条件の最適化を行っている。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、X線回折法によるHAX-1のC末端領域とUCP3のループ2領域の複合体の構造決定を試みた。対象とするHAX-1のC末端領域は膜結合性を示しており、界面活性剤存在下での結晶化や膜タンパク質の変性を防ぐ脂質キュービック相(LCP)法による結晶化を網羅的に行い、いくつかの結晶を得て、回折実験を行った。このうち多くの結晶は塩であることが判明したが、一つの条件のみ、わずかな回折点が得られた。今後、この結晶化条件をベースに、さらなる検討を行うことで構造解析が可能なデータが得られることが期待される。現在、研究期間の半期であり、残りの半期で目標に到達できると考え、「おおむね順調に進展している」と判断した。
今後も引き続き、X線回折法によるHAX-1のC末端領域とUCP3のループ2領域の複合体の構造決定を行う予定である。回折点が得られた結晶化条件をベースに網羅的な結晶化を行う。また同時に、HAX-1の発現領域の最適化も行う。最終的に、この複合体の立体構造を明らかにする。
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J Nutr. Sci. Vitaminol (Tokyo).
巻: 62 ページ: 32-39
10.3177