所属研究室で見出されたミトコンドリアへの過剰なカルシウム取り込みの制御HAX-1-UCP3複合体に着目し、構造生物学的手法(X線回折実験・NMR法)を駆使して、この複合体の構造機能相関研究を行った。これまでに、以下のことを明らかにしてきた。①HAX-1とUCP3の相互作用領域がそれぞれC末端側領域(HAX-1(211-280))とミトコンドリア内腔に存在するループ2領域(UCP3(165-175))であること及び両者の結合にはカルシウムの存在が必須であること。②HAX-1(211-280)に関しては、カルシウムと直接結合すること及びその結合により大きな構造変化(部分的なフォールディング)が誘起されること。③HAX-1は、カルシウムとの結合により膜結合性を獲得すること。④HAX-1のC末端側の膜結合に関わるαヘリックスを除去すると、UCP3ループ2との結合は維持されるが、カルシウムと直接結合できなくなること。これらの結果から以下の仮説を立てた。HAX-1のC末端側のαへリックス領域は、カルシウム非存在下ではアンフォールド状態をしており、UCP3のループ2領域が、HAX-1のUCP3のループ2領域との結合領域に接近するのを妨げる。一方、カルシウム存在下においてC末端側のαへリックス構造が誘起されると共に膜結合性を獲得し、UCP3ループ2領域との結合領域が露出することでUCP3との結合が可能になる。また、この複合体と相互作用する因子があるか否かをUCP3を強制発現させた筋芽細胞のミトコンドリア画分とリコンビナントHax-1(211-280)を用いて、免疫沈降実験を行った。因子の同定には至らなかったが、この複合体と結合しうる因子が存在することを明らかにした。
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