研究課題/領域番号 |
15J40150
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
矢野 佳芳 新潟大学, 医歯学系, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2015-10-09 – 2019-03-31
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キーワード | quaking / RNA結合蛋白質 / 選択的スプライシング / HITS-CLIP / 神経幹細胞 / 細胞間接着 / グリア細胞 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
RNA結合蛋白質であるQuaking5(Qki5)の胎生期神経幹細胞における新規機能を明らかにした論文「An RNA-binding protein Qki5 regulates embryonic neural stem cells through pre-mRNA processing in cell adhesion signaling」をGenes&Development誌に筆頭著者として発表した。 論文の概要は以下のようである。 1)Qk遺伝子をノックダウンしたマウス培養神経幹細胞を用いたmRNA-sequence解析により、Qki5が神経幹細胞の幹細胞性維持に寄与していることを明らかにした。2)胎生期マウス脳を用いたQki5 HITS-CLIP解析により、トランスクリプトームワイドにQki5が直接結合するRNA部位を明らかにし、結合部位を一塩基解像度で解明した。さらに、1)2)を統合的に解析することにより、Qki5が直接制御する選択的エクソンを同定し、選択的スプライシングの制御ルールを同定した。3)2)により得られた892個の標的RNA群のパスウェイ解析を行うと、細胞間接着に関するパスウェイのみが有意に得られた。4)Qkを神経系特異的に欠損させたマウス(cKO)の脳を組織学的に解析した。その結果、パスウェイ解析で予期されたようにcKOマウスの神経幹細胞ではb-カテニンなど細胞間接着に必須の蛋白質の発現低下や極性の消失が見られ、神経幹細胞が脳室下帯/中間帯に分散し、さらに神経細胞が脳室帯に異所的に存在するなどの異常が起きることがわかった。また、cKOマウス脳由来のmRNAではb-カテニンの上流制御分子群の選択的スプライシング異常が見られた。 以上のように、Qki5は選択的スプライシング制御を介して、神経幹細胞の細胞間接着を調節する重要な因子であることを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究開始より3年度目に当たる本年度は、Qki5の胎生期神経幹細胞における新規機能の同定に関する論文「An RNA-binding protein Qki5 regulates embryonic neural stem cells through pre-mRNA processing in cell adhesion signaling」を発表することができ、高く評価できると言える。本研究成果はプレスリリースを行い、広く社会に公表を行なった。また、10月には本成果を米国Cold Spring Harbor Laboratory Meetingにて、2月には第8回新潟大学脳研究所共同研究拠点国際シンポジウムにて、ポスター発表を行なった。その後は、さらに研究を発展させ、新たな知見が得られつつあり、グリア細胞を含む神経系細胞における非常に重要だと考えられるQki5の新規機能がさらに明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
Qki5は、胎生後期になると神経幹細胞だけでなく、グリア細胞の一つであるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)からオリゴデンドロサイト(OLs)にかけても強く発現するようになる。そこで、Immunopanning法を用いてOPCを選択的に培養、OLs に分化誘導し、分化に伴って変動するOLs特異的エクソンをOLego-Quantasにて解析した。そこで、先行研究にて同定した神経幹細胞のにおけるQki5のターゲットうちのOLs特異的エクソンにおける寄与率を、現在検証中である。今後は、Qk遺伝子をノックダウンしたマウス培養OPCを用いたmRNA-sequence解析やQkコンディショナルノックアウトマウスを用いた解析により、これまでに予期されているOLs特異的制御におけるQkiの寄与率を明らかにし、どのような細胞機能を制御しているかを明らかにする。さらには、Qkiと共役して、もしくは単独でOLs特異的エクソンを制御しうる新規RNA結合タンパク質の同定を進めている。
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