今年度は,(1)前年度までに投稿した論文1報に関して,改訂を終え再投稿すること,(2)約5.8億年前の微化石(アクリターク)の顕微赤外分光分析を前年度に引き続き行い,結果を論文としてまとめることを主な目標とした。 投稿論文については,筆頭著者として改訂中であったカナダ・Fifteenmile Groupから産出された約8億年前の黒色チャートの顕微赤外分光マッピング分析の原稿を再投稿し,受理された。 つぎに,南中国三峡地域から産出した約5.8億年前のアクリタークについて,SPring-8の顕微赤外分光計を用いマッピング分析を行った。光学顕微鏡観察により,外膜に突起構造を有するか否かに基づきアクリタークをAcanthomorphとその他の2つに大別した。市販の顕微赤外分光面分析の結果,突起構造の有無に関わらず,外膜はいずれも芳香族C-H結合を含むことが前年度までに明らかになっていたため,SPring-8の顕微赤外分光計でAcanthomorphの突起構造も芳香族C-H結合を含むか否か判別することを目標とした。しかしながら,顕微赤外顕微鏡下での光学観察像が想定していたより暗く,試料の測定位置を特定するのに時間を要したこと,マッピング測定中に試料ステージが移動する際に試料が動くことといった問題が生じた。テープで試料を仮止めする,あるいは試料を光学結晶にマウントした後に試料ステージに載せる等の対策を行ったが,十分には改善しなかった。この問題については,次年度SPring-8利用申請を行い,装置の動作条件を含め測定条件を再検討し,再測定を行う予定である。
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