研究実績の概要 |
本研究ではイネ澱粉生合成関連酵素の相互作用および複合体形成を詳細に分析し、澱粉構造の制御機構を明らかにすることを目的として研究を行った。 1)各アイソザイムがどのような大きさの分子量の複合体を形成するか明確にした。Superdex200担体を用いて、イネ種子内で形成されたタンパク質複合体を分子量ごとに分画したところ、イネの登熟胚乳で高い発現量を示した全ての澱粉生合成関連アイソザイム(SSI, SSIIa, SSIIIa, SSIVb, BEI, BEIIa, BEIIb, PUL, ISA1, Pho1)が高分子量にも溶出することが明らかになった。 2)タンパク質複合体を形成したアイソザイムが活性を維持するかを明らかにするため、ゲル濾過法で分画した画分を非変性ゲルを用いたNative-PAGE活性染色法で分析したところ、この手法で検出できる全てのアイソザイムが活性を維持した状態で高分子量に存在することが明らかになった。 3)各アイソザイムが他のどのアイソザイムと相互作用するかを明らかにするために、各アイソザイム特異的抗体をイネ登熟種子抽出液と反応させ免疫沈降法を行った。今年度は、既存のアイソザイム特異的抗体を用いて、溶出したサンプルのウエスタンブロットを行い、複合体に含まれる他の構成アイソザイムを明らかにした。他の穀類で示唆されていたSSI-SSIIa-BEIIb, BEI-BEIIbがイネでも形成していることに加え、新たにBEIおよびBEIIbとPULが複合体を形成することが明確になった。 4)タンパク質複合体がグルカン合成能力を持つかどうかを明らかにするために、イネ登熟種子抽出液をBlue-Native-PAGE法を用いて、複合体を分子量ごとに分離し、その後、ゲルを基質と反応させることで、内在性のタンパク質複合体がグルカンを形成することを明らかにした。その結果、モノマーに加えて約200, 400, 450kDaのタンパク質複合体が、ヨウ素で染色できる構造を持ったグルカンを形成できることが明らかになった。
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