研究課題/領域番号 |
15J40201
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
三瓶 由紀 和歌山大学, システム工学部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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キーワード | 里山 / 制度検討過程 / 制度運用 / 工場内緑被 / 生態系サービス |
研究実績の概要 |
今年度は,堺市について,制度の検討過程の把握と工場内緑被の現状把握と制度適用可能性の検討に重点的に取り組んだほか,名古屋市、アメリカの制度に関するデータ収集を完了した。 制度の検討過程の把握については,行政資料の分析と担当者へのヒアリング調査により,制度が検討されるに至った背景・将来的な構想を把握した上で,検討過程で,どのように連携がはかられたかという観点から,組織体制とそれぞれの役割を把握した.工場内緑被の現状把握と制度適用可能性の検討については,緑は生態系保全上重要であるだけでなく人々に生活圏の文化的サービスも供給しており,里山と都心部の緑とでは異なる役割が期待され,両方が重要であるという視点から分析を行った。高解像度衛星画像を用いて,緑被データを作製するとともに,土地利用5000データとから工場用地を抽出した。各工場用地ポリゴンについて,地域住民が直接的間接的に接する機会があり得ると考えられる境界部から内側5mの外周部と,それよりも内側の部分を内部との2つに区分し,工場内緑被の立地特性・集塊性について把握した。 また,名古屋市については,今年度データ収集を行うと共に,行政担当者へのヒアリングを行った。制度の制定背景を把握する中で,制度自体は整っているものの,企業側が運用に乗り気ではなく,運用に至らない実態を把握した. さらに海外における類似制度との比較分析について,今年度,海外の諸制度について情報を収集し、比較検討した結果,アメリカの開発権移転制度が,都心部開発と郊外保全とを関連づけている点、また,名古屋市の事例とも非常に類似性が高いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,堺市について制度の検討過程と運用実態の把握に重点的に取り組んだほか、名古屋市、アメリカの制度に関するデータ収集を完了した。また2016年4月の堺市の現地植生調査、ニューヨーク市立大学への研究滞在など、次年度に予定されている調査・研究準備も既に完了しており、来年度における研究・調査の準備も滞りなく実施しており、おおむね順調に進展してきていると考えられる。 ただし、今年度の調査で,名古屋市では運用事例が存在しないなど,事例によっては制度運用状況に大きな違いがあることが分かってきた。今後,追加調査や別の形での調査が必要となり、調査計画に変更が出ると考えられるが,事例ごとに目標を見直し,堺市や海外事例に優先的に取り組みつつ,名古屋市の研究計画について再検討することで当初の予定通りに研究が進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
堺市については今後,制度運用により実施された里山管理の効果の把握に向け,2016年4月に現地調査を実施予定である。そのために必要な人員の確保や堺市への立入許可の申請などを含めた調査準備は,今年度中に既に完了しており順調にすすめられると期待される。 名古屋市については,次年度,企業側へのヒアリング等を通じて,運用に至らない具体的な要因について明らかにする予定である.同時に,それらの結果を踏まえ,堺市と名古屋市との相違点についても整理する。 海外における類似制度との比較分析については,今年度の調査により類似性が高いと考えられたアメリカの開発権移転制度を対象とすべく、開発権移転が長期にわたり実施されているニューヨーク・ニュージャージー州の事例について,運用実態について現地調査・分析を行うべく,次年度5-8月にニューヨーク市立大学に研究滞在する予定にしている。そのための滞在許可の申請など,滞在に必要となる準備は今年度中に完了しており、こちらも順調に進展することが予想される。
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