研究実績の概要 |
本研究では、がんの進行において重要なプロセスと言われながらも、長年進展の停滞が続いている、ガレクチン1および3の細胞外への分泌機構解明に挑む。具体的には、申請者が独自に開発した第2世代EMARS法を用いて、ガレクチン1および3と会合を果たし、それらの分泌を司る分子群を明らかにすることを目的とした。本年度は、まず、ガレクチンの分泌を阻害する条件を探索した。4種の阻害剤(LY294002、Bafiromycin A、Y27632、U18666A)をそれぞれ添加した条件下、あるいは飢餓条件下にてがん細胞(HeLa, PC3, ABC-1)を培養し、培養上清中におけるガレクチン1および3の濃度について、ELISA法を用いて測定した。その結果、LY294002、Bafiromycin A、U18666Aを添加した場合にガレクチン1および3の分泌量が増大し、Y27632を添加した場合は未処理の場合と同等の分泌量であった。また、飢餓条件下にて同様にガレクチン量を測定したところ、HeLaおよびPC3細胞において、ガレクチン1・3の分泌量が増大した。さらに、細胞内のガレクチンの局在を確認するため、HeLa細胞においてガレクチン3に対する抗体を用いて免疫染色を行い、共焦点顕微鏡にて観察した。その結果、Bafiromycin A、Y27632、U18666Aの添加時あるいは飢餓培養時においてガレクチン3由来の小胞が確認された。続いて、EMARS反応に必要なベクターを作製した。ここでは赤色蛍光タンパクであるmDsRedにAPEX(アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)とガレクチン1あるいは3の配列をつないだmDsRed-APEX-galectin1(あるいは3)ベクターを作製した。これらのベクターをHeLa細胞に導入し、ガレクチンの発現を共焦点顕微鏡により確認したところ、細胞質全体にその発現が確認された。
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