研究実績の概要 |
1. 28年度までの研究で、拡張ヘンゼル構成のグレブナー基底による定式化では2多項式系{G,H}の消去イデアル(主変数xを消去)の最低元Sとその余因子A',B'が重要だが、従変数が多いと計算が非常に重いことが分っていた。本年度はGとHから生成される剰余列PRS(G,H)を利用して(S,A',B')の計算の高速化を目指した。グレブナー基底法で計算したA'とB'は大抵xに関し高次の多項式となるが、次数低減のため A'をHで、B'をGで割ったら、試した例すべてで割り切れた。そこで、このことは一般に成立するに違いないと予想し、苦労して次の定理を得た。PkをPRS(G,H)の最終元、AkとBkをその余因子、A=rem(A',H), B=rem(B',G) (remは剰余を表す) とすれば、(S,A,B) = c*(Pk,Ak,Bk)/gcd(cont(Ak),cont(Bk)) が成立する(cは定数でcontは係数のGCD(最大公約子)を表す)。 2. 拡張ヘンゼル構成は本研究代表者らが考案した算法で、ヘンゼル構成が破綻する臨界点における展開が可能である。この算法のアイデアを用いて、効率性が実証済みのPc-PRS GCD (べき級数係数剰余列GCD算法)とEZ-GCD(拡張Zassenhaus GCD算法)を展開点が臨界点の場合に拡張し、種々の効率化を行った。 3. 多項式の剰余列計算は部分終結式理論により詳しく研究されたが、擬除算に基づいているので、主変数に関して疎な多項式では不経済な計算をする。そこで、擬除算を(疎多項式用の)疎擬除算に拡張し、疎擬除算に基づく疎剰余列に対する行列理論を建設した。さらに、(疎)擬除算に基ずく剰余列計算は不可避的に中間式膨張を起こすが、この問題は未解決だった。そこで、べき級数演算を用いて不要な高次項を組織的に除去する方法で、この問題を解決した。
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