本研究の目的は、tangleと呼ばれる概念の代数的構造を明らかにすることである。ここでtangleとは、グラフ理論、アルゴリズム理論、計算量理論の分野で精力的に研究されている枝幅と呼ばれるグラフパラメータの双対概念である。研究のきっかけは、tangleの定義と(半順序関係上の)極大イデアルの定義が類似している点であった。そのため申請時では、tangleと極大イデアルの関係を明らかにすることが一つの大きな目標であった。しかしながら研究を進めるにつれ、極大イデアルよりはむしろその双対概念である超フィルタとの関係を明らかにする方がよいことに気付き、28年度からは超フィルタの文脈を用いて、tangleを如何に解釈するかについて研究を行った。 最終的には、当初の目標をほぼ達成できた。結果を一言でまとめるなら、tangleはある制限のついた自由超フィルタと解釈できる、と言える。ここでいう制限とは、劣モジュラ関数の値がある閾値を超えないというものである。ある意味、劣モジュラ関数の制約をつけることで、超フィルタの概念をtangleに自然に拡張できる、とも言える。 Tangleを超フィルタの文脈で警官と泥棒ゲームとして解釈することで、tangleの定義の各公理と超フィルタの定義の各公理との対応関係がより鮮明になり、tangleの理解が容易になった。警官の必勝戦略が枝分解に対応し、泥棒の必勝戦略が超フィルタに対応することが明らかになった。 さらに、申請時の計画にはなかったが研究を進めていく中で、線形枝幅に対応する単イデアルという概念を提唱し、枝幅と極大イデアルの関係と類似の関係が線形枝幅と単イデアルの間でも成り立つことを示した。
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