研究課題/領域番号 |
15K00018
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
神保 秀司 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (00226391)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | グラフ理論 / オイラー回路 / 離散構造 / 不可能性の証明 / アルゴリズム / 高並列計算 / ニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
平成29年10月に開催された平成29年度電気・情報関連学会中国支部連合大会において「完全解析結果に基づいた畳み込みニューラルネットワークによるペンタゴの学習」という標題で講演した。さらに平成30年2月に開催された京都大学数理解析研究所共同研究(公開型)「代数系、論理、言語とその周辺領域」において "Learning finite functions by neural networks" という標題で講演し、さらに平成30年3月に開催された第13回組合せゲーム・パズル研究集会において「正確な訓練データを使ったニューラルネットワークによるゲーム局面の学習」という標題で講演した。これらの研究の過程でGPUを使った高並列計算技術を習得し、ボードゲームであるペンタゴの局面のニューラルネットワークによる学習についての実験結果が得られた。特に、最後に挙げた「正確な訓練データを使ったニューラルネットワークによるゲーム局面の学習」という標題の講演の研究では、様々な難易度の局面を含む訓練データによる学習から得られたニューラルネットワークよりも、その一部分である難解な局面だけを集めた小さい訓練データによる学習から得られたニューラルネットワークの方が学習量が少ないにも拘わらず僅かであるが性能が良くなるという結果が得られた。 ニューラルネットワークは、一般的な探索問題についても有用であると期待される。例えば、現在15点からなる完全グラフのオイラー回路で11以下の長さの部分閉路をもたないものが存在しないことを予想しているが、その反例を効率的に見付けようとすればニューラルネットの活用し探索範囲を見込みの有りそうなものに制限することが有力な手段になり得る。さらに、ニューラルネットによる学習のための高並列計算技術、特にGPUの活用技術を今後完全グラフのオイラー回帰長の探索に応用することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点でも、15以上の任意の奇数 n について n - 4 以下の長さの部分閉路をもたないものが存在しないことを予想しているが、その理論的解明の糸口すら得られていない。そのため、15点からなる完全グラフのオイラー回路で11以下の長さの部分閉路をもたないものが存在しないこと、すなわち15点からなる完全グラフのオイラー回帰長が11であることを計算機実験により究明することを目指しているが、平成30年度当初から利用可能な九州大学のスーパーコンピュータシステム ITO を使っても、従来の単純な探索アルゴリズムを並列化しただけでは平成30年度内に実験が終了しないことが確実である。 しかしながら、平成29年度後半からの研究に伴う GPGPU の利用技術の向上により手に負える範囲の探索空間の規模がかなり増大している。そのため、今後の探索空間縮小のための理論の進展により平成30年度内に15点からなる完全グラフのオイラー回帰長の決定が可能であると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、九州大学のスーパーコンピュータシステム ITO を活用した15点からなる完全グラフのオイラー回帰長の決定、すなわち「15点からなる完全グラフのオイラー回路で11以下の長さの部分閉路をもたないもの」の有無を決定するための計算機実験の完了を最優先課題にしている。このような計算機実験は、ある種のパズルの解の探索のための計算機実験と広い範囲で共通しているためパズルの解の探索技術についての文献調査及び計算機実験を並行して実施する。さらに、現実世界の現象の数学モデルを構築し、それをMPIを活用した高並列処理により解析する研究者との共同研究を模索している。 本研究の当面の目標は、「15以上の任意の奇数 n について n - 4 以下の長さの部分閉路をもたないものが存在しない」という予想の証明である。そのためにグラフ理論及び関連分野の役に立ちそうな定理とその証明手法についての文献調査を継続して遂行する。計算機実験により15点からなる完全グラフのオイラー回路のすべてが11以下の長さの部分閉路をもつことが証明されれば、上記の予想の強い裏付けになると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた補助記憶装置の購入を遅らせたため次年度使用額が生じた。 平成30年度の助成金の使用計画は、次の通りである。平成29年度後半から使用を開始した九州大学のスーパーコンピュータシステム ITO を本格的に活用し、15点からなる完全グラフのオイラー回帰長を今年度前半に決定することを目指す。このような問題の解決には高並列計算が可能な ITO は、極めて有用である。そのために、NVIDIA社の P100 GPU 16個を同時に使用できるように申請している。さらに ITO の利用によって生じる大量のデータの保存のために補助記憶装置を増設する。 平成30年度前半には、ITO を利用して得られた研究成果について電子情報通信学会、あるいは、情報処理学会の研究集会で発表する。平成30年度後半には、本研究全体についての成果について同様の研究集会及び総合的な大会で発表する。
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