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2016 年度 実施状況報告書

将来の計算機構としての可逆計算システムの効率化と体系化

研究課題

研究課題/領域番号 15K00019
研究機関広島大学

研究代表者

森田 憲一  広島大学, 工学研究院, 名誉教授 (00093469)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード可逆計算機構 / 可逆セルオートマトン / 可逆チューリング機械 / 計算万能性 / 可逆論理素子
研究実績の概要

可逆コンピューティングは将来、微視的レベルの可逆的な物理法則や現象を直接的に利用して、高集積度の計算機を構成しようとしたときに鍵となる計算パラダイムである。このような視点から、平成28年度は、どれほど単純な可逆的素過程から可逆計算システムが構成できるかという問題を、可逆セルオートマトン、可逆論理素子、および可逆チューリング機械に基いて研究し、以下の成果を得た。
1.初等的三角形状分割セルオートマトンの万能性の解明:この種のセルオートマトン(elementary triangular partitioned cellular automaton, ETPCA) のクラスは、二次元セルオートマトンの中でも最も単純なものの一つであり、わずか4個の規則によってその動作が規定される。ETPCAは256種類あるが、前年度に引き続き、その内の36種類の可逆的ETPCAの計算万能性について研究した。特に識別番号0347の可逆的ETPCAは、その単純さにもかかわらず多様な機能が発現する。それらを巧妙に組み合わせることにより、2状態可逆論理素子が実現でき、さらに、可逆チューリング機械が簡潔に、かつ体系的に構成できることを示した。また、前年度に与えた9種類の可逆的保存的ETPCAの中で6種類が万能3種類が非万能になるという結果を論文としてまとめ、発表した。
2.単純な万能可逆チューリング機械の構成法:万能チューリング機械の状態数と記号数をどれだけ小さくできるかという古くから注目されている問題の可逆版を研究した。前年度までの研究により得られた、サイクリックタグシステムを模倣できる6種類の小サイズ万能可逆チューリング機械と、それらを変換して構成できる状態数と記号数の一方が非常に小さい機械を比較し、構成方法体系的に論じた論文を単行本の一章として出版した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の研究計画調書には次の4つの研究項目を挙げた:(i)2状態可逆論理素子の万能性の解明とそれによる可逆計算機モデルの構成法、(ii)計算万能な可逆システムの単純化、(iii)可逆計算機モデルにおける効率的な計算法、(iv)可逆コンピューティングの理論の体系化。「研究実績の概要」に述べた成果1は上記の(i)と(ii)に、成果2は(ii)に対応している。(i)については、識別番号0347の初等的三角形状分割セルオートマトン(ETPCA)の空間中に特定の2状態可逆論理素子が実現でき、それによって可逆チューリング機械が容易に構成できることを示した。これによりこの素子の有用性と実現可能性の大きさが確認できた(成果1)。この結果は国際会議論文として投稿中である。(ii)については、可逆的保存的ETPCAに関して前年度に得られた結果を国際会議論文として出版した(成果1)。さらに、万能可逆チューリング機械に関する結果を単行本の一章として出版した(成果2)。(iii)については本年度は研究を行わなかったが、これは29年度に行う。(iv)については、過去20数年にわたって行ってきた研究の成果を体系化した英文単行本の最終原稿のとりまとめを行った。これは平成29年中の出版が見込まれる。以上の中で、とりわけ本年度はETPCAモデルを用いた研究で、海外から注目される成果があった。これらのことから、本年度は順調に研究が進んだと考えている。

今後の研究の推進方策

「現在までの進捗状況」に記載の研究項目(i)-(iv)は次のように取り組む。(i)については、本年度に引き続き、可逆的な初等的三角形状セルオートマトン(ETPCA)による2状態可逆論理素子の構成法について研究し、どのような論理素子が単純な可逆的規則によって簡潔に実現できるかを解明する。(ii)については、最も興味深い振る舞いをする、識別番号0347の可逆的ETPCAの性質や計算能力をさらに詳しく調べる。また、36種類存在する可逆的ETPCAの中で計算万能を有するか否かが未解決である23種類について、それらの能力の解明を行う。(iii)については、1次元可逆セルオートマトンによる効率的な形式言語認識アルゴリズムを研究する。(iv)については、まず、これまでに執筆を続けてきた可逆コンピューティングに関する英文単行本を29年中に出版する。また、これ以外の解説論文の執筆も行う。可逆コンピューティング理論の研究とその体系化はもちろん単行本の出版で終わるのではなく、未知の部分や未解決問題も多く残されているため、これ以後も地道に研究を継続し、新たなアイデアや方法論を開発する。

次年度使用額が生じた理由

「今後の研究の推進方策」に記載した、識別番号0347の可逆セルオートマトンの新たな性質が明らかになったため、29年に開催されるセルオートマトンの国際会議(AUTOMATA 2017)や関連する国内の学会で発表する必要が生じたため次年度にその経費を繰り越した。

次年度使用額の使用計画

平成29年度は、研究成果発表と情報収集のための国内および外国出張旅費を500,000円と、国際学会の参加登録費を80,000円見込んでいる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Universality of 8-state reversible and conservative triangular partitioned cellular automaton2016

    • 著者名/発表者名
      K. Morita
    • 雑誌名

      Lecture Notes in Computer Science

      巻: 9863 ページ: 45-54

    • DOI

      10.1007/978-3-319-44365-2_5

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] A non-conservative reversible elementary triangular partitioned CA2017

    • 著者名/発表者名
      K. Morita
    • 学会等名
      CiNet Workshop on Cellular Automata, Distributed Computing, and Mobile Agents
    • 発表場所
      吹田市
    • 年月日
      2017-02-08
  • [学会発表] Complex behavior in elementary triangular partitioned cellular automata2017

    • 著者名/発表者名
      K. Morita
    • 学会等名
      京都大学数理解析研究所RIMS研究集会「理論計算機科学の最先端」
    • 発表場所
      京都市
    • 年月日
      2017-02-01 – 2017-02-03
  • [図書] Advances in Unconventional Computing Vol.1: Theory (ed. A. Adamatzky) (分担部分: K.Morita, Chapter 10: Two small universal reversible Turing machines)2017

    • 著者名/発表者名
      K. Morita
    • 総ページ数
      874 (pp.221-237)
    • 出版者
      Springer
  • [備考] 広島大学学術情報リポジトリ

    • URL

      http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00039997

  • [備考] 広島大学学術情報リポジトリ

    • URL

      http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00042655

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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