研究実績の概要 |
秘密分散法とは,資格を有する参加者集合のみが秘密情報を復元できるように秘密情報を分散暗号化するための暗号技術であり,重要な情報に対するアクセス制御を実現するための核となる技術である.秘密分散法には,復号計算に計算機を必要とせずそれを人間自身が行うことのできる一風変わったものが存在する.視覚復号型秘密分散法はそのような秘密分散法の例である.この視覚復号型秘密分散法では,秘密情報(白黒画像)を暗号化して生成された白黒画像を透明なシートに印刷したものが各参加者に分配される分散情報になる.復号は参加者が持ち寄った透明なシート(分散画像)を重ね合わせ,現れた画像を人間の目で判別することにより行われる. 視覚復号型秘密分散法の2値(白黒)秘密画像を多値(グレースケール)画像に拡張する一つの方法は,暗号化にデジタルハーフトーニングを利用することである.しかし,複雑なアクセス制御を実現する視覚復号型秘密分散法では,復元された秘密画像のコントラストは必然的に低くなるため,標準的なデジタルハーフトーニングを適用して生成された分散画像から復元された秘密画像を認識することは一般に容易ではない. ここで,復元画像の視覚品質を改善するためには, エッジ構造などの人間の視覚系が敏感である構造情報を強調することが有効である. 平成30年度は, 構造的類似性(SSIM) 指数を修正して, 構造的類似性と色調的類似性の両方を同時に評価できるような指標を構成した.修正された指数の計算コストはSSIM指数と同程度であるため,これを使用することで既存の最適化に基づくハーフトーニングにおける目的関数を簡略化することが可能である.さらに,修正された指数を用いた実験により,これが実際に構造的類似性と色調的類似性の両方を評価できていることを確認した.
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