研究課題/領域番号 |
15K00025
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
関川 浩 東京理科大学, 理学部第一部数理情報科学科, 教授 (00396178)
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研究分担者 |
白柳 潔 東邦大学, 理学部, 教授 (80396176)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 数値数式融合計算 / 安定化理論 / 近似 / 誤差 / 代数方程式 / 行列 / 最短ベクトル / グレブナ基底 |
研究実績の概要 |
代数問題について、着目している性質(実根の数など)が、係数の誤差が十分小ならば確定する場合を安定な場合、そうでない場合を不安定な場合と呼ぶ。また、最近接問題とは、着目している性質を持たない入力に対し、その性質を持つような、入力にもっとも近い対象を探す問題である。 研究実施計画において設定した課題(1)は、代数問題に対し多項式や方程式の係数の摂動が解に与える影響を理論的に解析することであり、課題(2)は、課題(1)の結果を利用し、係数に誤差のある代数問題に対し、不安定な場合は最近接問題の解を、安定な場合は着目している性質が保たれる係数の摂動限界を求めるアルゴリズムを構築することである。課題(3)は、課題(2)で構成したアルゴリズムを安定化理論などを用いて信頼性を保ったまま効率化することである。 本年度に得た成果のうち、まず、課題(1)、(2)に関わるものは、1変数多項式について、係数の誤差のため、本来、零点となるべき点での値が0からずれる場合、その点を零点とする最近接多項式を求める問題において、従来、零点が一つの場合を対象としていたものを、零点が複数の場合に拡張した結果を論文としてまとめたこと(掲載決定)、および、係数に誤差のある多変数多項式の補間問題において、頑健なアルゴリズムを提案し国際会議で発表するとともに論文化したことである(掲載決定)。 次に、課題(3)に関わる成果は、課題(3)における主要な計算手段である安定化理論を直接、あるいは、計算履歴と合わせて利用する方法を、最短ベクトル、行列の有理標準形、一般逆行列、および、グレブナ基底を求める計算に適用した実験を行い、どのような場合に有効であるかを調査し、その結果を国際会議、研究会において発表するとともに、一部については論文として発表したことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の予定は、1.平成27年度からの問題を継続して研究すること(課題(1)、(2))、多項式関係で理論上あるいは実用上重要なその他のいくつかの問題について、課題(1)から研究を開始すること、2.種々の問題について課題(3)に挙げたアルゴリズムの効率化を進めること、であった。 このうち、1については、一変数代数方程式に対して複数の零点を指定した最近接問題の研究を進め、その成果を論文化するとともに(掲載決定)、結果をより簡潔に表示する改良を行い研究会で発表した。また、新たに多変数多項式の補間について研究を開始し、国際会議で成果を発表するとともに成果を論文化した(掲載決定)。 2については、安定化理論を利用し、最短ベクトル、行列の有理標準形、一般逆行列、および、グレブナ基底を求める計算に適用した実験を行い、どのような場合に有効であるかを調査し、その結果を国際会議、研究会において発表するとともに、一部については論文として発表した。 以上より、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
課題(1)、(2)については、まず、本事業の開始直前に予備的な研究を行った項目のうち、平成27、28年度には手をつけることができなかった連立代数方程式に関する問題の研究を行うことがある。平成28年度末に行った予備的な考察の結果、当初予定していた問題とは異なるが、実用上重要な問題に関し進展が期待できそうな感触を得ているので、この問題に関する研究を進めたい。また、平成27年度に研究を開始した、一変数代数方程式で複数零点を指定した問題について、指定する零点の個数に関係なく統一的な取り扱いができそうな見通しも得られた。こちらについても研究を進めていく。 課題(3)については、平成28年度に得た結果の論文化、アルゴリズムのさらなる効率化の検討、さらに多くの問題に対する実験の実施を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
関川に次年度繰越金953円の生じた理由は以下の通りである。前年度繰越金と平成28年度研究費を合わせた額に対し予算計画を立て執行したが、所属大学の規則で、大学研究費との合算は研究期間最終年度(平成29年度)の1回のみしか認められていないため、少額(953円)の繰越が発生することになったからである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に使用する研究費のうち、主だったものは以下の予定である。まず、平成28年度末から平成29年度初めに得た研究成果を、カイザースラウテルン(ドイツ)で7月に開催される国際会議International Symposium on Symbolic and Algebraic Computation 2017にて発表するための旅費、会議参加費として使用する(関川)。 また、情報収集、研究者との議論、平成29年度中に得た成果の発表などのため、国内で開催される学会、研究会に参加するための旅費、会議参加費として使用する(関川、白柳)。
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