研究課題/領域番号 |
15K00028
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
王 立華 国立研究開発法人情報通信研究機構, サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室, 主任研究員 (00447228)
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研究分担者 |
林 卓也 神戸大学, 工学研究科, 特命助教 (70739995)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 準同型暗号 / 代理計算 |
研究実績の概要 |
本年度は主に課題2.「クラウド環境に必要な機能を備えた代理計算方式の構築とその改良」及び課題3.「提案方式のセキュリティパラメータの選択、高速実装・実証実験」に取り組み、以下の研究を行った。 (1)量子計算機に対しても安全であると期待される格子暗号について、加法ならびにテンソル積について準同型性を満たすとき、既存研究よりも効率の良いセキュア内積、すなわち安全に計算委託が可能な内積計算の一般的構成法を提案した。提案手法は既存のLWEベースやRing-LWEベース準同型暗号方式に適用できる。本成果は国際会議NSS2017で発表した。高速実装による実用性を検証し論文誌に投稿予定。 (2)Ring-LWEベース暗号をはじめとする多項式の加算・乗算をサポートする準同型暗号において、セキュア内積計算に新たなエンコードを組み合わせることで、行列乗算の安全かつ効率的な代理計算手法を提案し、特許出願を行った。行列の次元が小さいときのテスト実装を行った成果を国際会議CANS2017、国内学会SCIS2018で発表した。 (3)量子計算機に対して安全であると期待されるChaos暗号について北京郵電大学と共同で研究を行い、Chebyshev Mapsベース暗号化方式を構築、クライアント側の計算コストを削減するための暗号化処理をクラウドサーバへ安全に委託する方法を提案した。本成果は論文誌Concurrency and computation: Practice and Experienceに採録された。 (4)国際共同研究で、アクセス制限に役に立つ属性ベース暗号に基づいた代理再暗号化や同値チェック機能付きの暗号など暗号プリミティブを次世代インターネットアーキテクチャNamed Data Networkへの組み込み方法を提案し、論文誌へ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り進んでいる。課題2と課題3に関し、機微情報を含んだデータの計算をクラウドサーバなどの安全が保障されない環境上で行うため、準同型暗号の活用が考えられる。準同型暗号がサポートする加算・乗算などの基本的演算の組み合わせにより、種々の統計計算及び機械学習に演算が安全に可能であると期待されている。本年度はクラウド環境において、機械学習の基本演算である内積計算や行列乗算の耐量子計算機安全な代理計算方式の構築とその改良を行い、提案方式のセキュリティパラメータの選択、実証実験を遂行しており、本研究課題の核の部分に取り組んでいる。 今年度の本課題の研究成果は、論文誌採録1件、特許出願1件である。また、学会発表3件(国内学会1件、国際学会2件)を行っており、これらを理論的・実践的に発展させ論文誌へ投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
論文調査・学会参加・研究者交流による最新情報の収集、また、国内・海外研究協力者とのメール・対面での研究打ち合わせなどにより、引き続き課題2.「クラウド環境に必要な機能を備えた代理計算方式の構築とその改良」および課題3.「提案方式のセキュリティパラメータの選択,高速実装および実証実験」について研究を行う。 具体的には、セキュア内積計算の成果については、プライバシー保護機械学習(例えば、サポートベクターマシンなど)への応用展開を検討している。セキュア行列乗算の成果については、行列の次元が大きい場合はブロック分割法や並列計算などによる高速化、また、現状暗号文に対して1回しか計算できない乗算の回数を増やす方法を検討していく予定。さらに、提案方式のソフトウェア実装のほか、実用シナリオに即したソフトウェア開発などに取り組み、より現実に沿った実証実験を行う予定。また、代理再暗号化(PRE)について、再暗号化回数が限定されたPRE及び攻撃者の特定・追跡が可能なTraitor Tracing PREに関して残りの課題を整理し、解決策を模索する予定。 課題2は主に国内研究協力者 満保雅浩 教授(金沢大学)、海外研究協力者 Licheng Wang 准教授(北京郵電大)、Xavier Boyen 准教授(QUT)と代表者で行う。また、課題3については、主に研究分担者 林卓也 研究員(H30年度神戸大学からNICTへ転出)が遂行する。 旅費はNICT、神戸大学、及び金沢大学での研究打ち合わせ、研究調査や発表を目的とした国内・国際会議への参加で支出する予定。国際会議の参加の際には、海外研究協力者と打ち合わせを行えるように工夫し、限られている予算で効率的に計画を遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初は国内の連携研究者と打ち合わせのため、金沢へ出張する予定をしていたが、国内学会参加の際に研究打ち合わせをすることができたため、当初想定していた旅費を下回った。 今年度使用しなかった経費については、神戸大学からNICTへ転出した研究分担者林卓也との研究打ち合わせのための旅費の一部、また、研究用図書などの資料購入に充てる予定。
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