研究課題/領域番号 |
15K00033
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
安藤 和敏 静岡大学, 工学部, 准教授 (00312819)
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研究分担者 |
前原 貴憲 静岡大学, 工学部, 助教 (20751407)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / アルゴリズム / 組合せ最適化 |
研究実績の概要 |
部分木距離を表現する木を求めるアルゴリズムの開発(研究実施計画(3)).Hirai (2006) は木距離の概念を一般化する部分木距離の概念を導入した. 有限集合 X 上で定義される費用関数 w は,もし重み付き木 T と X の要素によって添え字付けされた T の部分木の集合 {Tx | x∈X } が存在して,全てのx,y∈Xに対してw(x,y)が Tx と Ty 間の距離であるとき,部分木距離と呼ばれる.与えられた行列が部分木距離である場合にそれを表現する木と部分木の集合を見出す多項式時間アルゴリズムの存在は未解決なままであった. 本研究では,与えらえた費用関数が部分木距離かどうかを判定し,もしそうであるのならばそれを表現する木と部分木を出力する O(n3) 時間アルゴリズムを開発した.ここで,n = |X| である. さらに,研究実施計画(5)に関連する研究「閉路完全既約費用関数と閉路完全解に対する効率的なアルゴリズムの開発」を行った.Trudeau (2012) は最小費用全域木ゲームに対する閉路完全解と呼ばれる解概念を導入し, 閉路完全解はいくつかの望ましい性質を満たすことを示した. Trudeau は Ando (2012) の結果に基づいて閉路完全解が O(n4) 時間で計算できることを示唆した. ここで, n はプレーヤーの数である. 閉路完全解は与えられた費用関数 w から定義される閉路完全既約費用関数w* に関連する最小費用全域木ゲームのShapley 値である.本研究では, 閉路完全既約費用関数 w* に対するいくつかの特徴付けを与え,これら特徴付けに基づいてw* を計算するためのO(n2 log n)時間アルゴリズム得た. さらに閉路完全解に対する O(n2 log n)時間アルゴリズムを与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に行った研究の「部分木距離を表現する木を求めるアルゴリズムの開発」は平成28年度の研究計画で記載した事項の一つであるが,計画より早くその目的を達成できた.これは評価すべき点である.また,平成27年度に行った研究「閉路完全既約費用関数と閉路完全解に対する効率的なアルゴリズムの開発」については,当初は研究実施計画(5)の「Shapley値が多項式時間で厳密計算できる最小費用全域木ゲームのクラスの拡張」について研究を進めていた中で,新たな研究の方向性を見出したために行われた研究である.この研究については当初予定していなかったものであるが,非常に有意義が結果が得られたと考えられるため評価できる.その一方で,平成27年度中に予定していた研究内容は次年度以降に持ち越すことにした.以上に述べたことにより,研究計画全体を見渡してみると遅れているともいえず,また,計画以上に進展しているともいえないために,上記の区分のような進捗状況であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行った研究のうち「閉路完全既約費用関数と閉路完全解に対する効率的なアルゴリズムの開発」は,様々な方向への発展の可能性を持った非常に興味深い成果である.その方向の一つは,任意の費用関数の閉路完全費用関数による近似理論である.これについては,任意の費用関数の超距離による近似の理論を閉路完全費用関数へと一般化することによって構成することができると予想している.別の研究の方向の一つは,閉路完全費用関数の一般化である.閉路完全費用関数はレベルグラフの2連結性によって定義される.レベルグラフのk-連結性を考慮することによって,閉路完全費用関数を一般化した概念が得られる.さらに,この一般化された費用関数に関連する最小費用全域木ゲームのShapley値を元のゲームのShapley値の近似値とすることによって,より精度の高いShapley値の近似が可能になると予想できる.これらのアイデアを理論的にとりまとめ,数値実験によってその有効性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は以下の通りである.研究分担者(1名)の役割分担は「任意の費用関数の木距離・部分木距離による近似アルゴリズムの開発とその性能評価及びその応用」であった.次年度使用額は主にこの研究成果を公表するために計上したものであったが,本年度中には研究成果を公表する状態まで仕上げることができなかったため,この次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
現在研究分担者とは平成27年度の研究実績の一つである部分木距離の表現アルゴリズムの高速化について研究を行っている.次年度使用額については,この現在進行中の研究について成果をとりまとめ,それを国際会議及び国際的学術雑誌において公表するために使用する予定である.
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