研究課題/領域番号 |
15K00035
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高橋 規一 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60284551)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 複雑ネットワーク / クラスタ係数 / 媒介中心性 / マルチエージェントネットワーク / 代数的連結度 / コミュニティー検出 / 非負値行列因子分解 / ストリームアルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究の主な成果は,a) 大域クラスタ係数最大グラフの理論解析,b) 辺挿入前後の媒介中心性の関係式導出と成長するネットワークへの応用,c) 正則グラフの平均頂点間距離の下界達成不可能性の証明,d) マルチエージェントネットワークの代数的連結度推定法の理論解析,e) 非負値行列因子分解(Nonnegative Matrix Factorization: NMF)に基づく高速なネットワークコミュニティ検出手法の開発,f) 出現頻度が急変するアイテムを検出するストリームアルゴリズムの性能評価,g) スパースさや滑らかさが考慮されたNMFの計算法の導出と理論解析,である.a) では,辺数と頂点数の差が4以下の場合について,大域クラスター係数の最大値とそれを実現するグラフの構造を明らかにした.b) では,グラフに1辺を挿入した後の各頂点の媒介中心性と挿入前の媒介中心性の関係式を導出し,それにより成長するネットワーク(頂点は固定で辺が次々と追加されていくネットワーク)の媒介中心性が高速に計算されることを実験的に示した.c) では,Cerfらによって与えられた平均頂点間距離の下界が,ある場合には達成不可能であることを理論的に証明した.d) では,これまでに提案したアルゴリズムの妥当性を理論的に考察し,平衡点の安定性や推定値の有界性を証明した.e) では,既存手法と同程度の検出精度をもち既存手法よりも高速な方法を提案し,小規模ネットワークを用いた実験によって有効性を確認した.f) では,研究代表者らのアルゴリズムについて,誤差の最大値を理論的に評価するとともに,大規模ストリームデータを用いた実験によって有効性を確認した.g) では,NMFの最適化問題において目的関数に因子行列のスパースさや滑らかさを制御するための正則化項が追加された場合の解法を提案し,その大域収束性を証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載したテーマの多くで着実に成果が出ている.特に,大域クラスタ係数最大グラフの理論解析と,マルチエージェントネットワークの代数的連結度推定法の理論解析で大きな進展があった.他のテーマについて少しずつではあるが進展しており,次年度の大きな展開が期待される.さらに,ネットワークコミュニティ検出手法の開発や非負値行列因子分解の反復計算法の解析など,周辺テーマについても成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従って引き続き研究を推進していく.成果の得られたテーマについては論文の形にまとめて論文誌や国際会議に投稿し,その他のテーマについては課題解決に向けた研究を継続する.特に,平均頂点間距離最小正則グラフの設計手法の開発と代数的連結度の分散推定法の理論解析を重点的に行いたい.さらに,研究計画に記したように,指標ごとの最適化手法を融合させて統一的なネットワーク最適化手法の構築を目指したい.
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