多重Ambient 計算(MAC)とRFID機器を用いた物流監視システム構築にあたり、最終年度は監視システムとモデル検査システムの構築を行い論文としてまとめ、研究会での口頭発表及び雑誌への投稿を行った。本論文は以下の2項目の内容からなる。 項目1 [RFID機器とMACによる物流監視システム]: このシステムは次の2つの機能からなる。機能1. MACプロセス式を動的に生成する機能: 実際のコンテナ輸送に用いられるマニュフェストと呼ばれる書類からMACプロセス式を動的に生成する機能。これにより先行研究では不可能であった複雑な経路を辿るコンテナ輸送をモデル化することが可能となった。機能2. ハンディ型RFIDを用いたコンテナ取扱分散監視機能: 先行研究では一隻の船に1つのクレーンで積み込み積み下ろしをすることを想定し固定式のRFID機器を用いていたが、実際のコンテナターミナルでは1隻の船に対する取扱が複数のクレーンで行われるため、機能の拡張が必要であった。本研究では各クレーンにハンディー式のRFID機器を分散配置し、各機器で読み取ったプロセス式をサーバーで処理し取扱の妥当性を判定する機能を実現した。 項目2 [海上物流計画に対するモデル検査]: 本研究で構築した物流監視システムでは物流システムをモデル化したMACのプロセス式が自動的に生成されるが、このモデルが物流計画の内容を正確に反映していない場合、この監視活動は無意味なものとなってしまう。そこで本研究では、このモデルが、動的に変化する物流システムの所期の性質を満たすことを自動的に確認するモデル検査システムを構築した。 以上の成果を論文「多重Ambient Calculus を用いた動的な海上物流計画に対するモデル検査」としてまとめ、情報処理学会数理モデル化と問題解決研究会に投稿し現在審査中である。
|