本年度は,昨年度実データ解析で得られた結果を検証するためのコンピュータ・シミュレーションを行った.また,それらの結果に基づき実データを用いた調査不能バイアスを調整した推定を行った.
まず,昨年度実データ解析で得られた結果を検証するためのコンピュータ・シミュレーションを行った.多くの場合で有用ではない補助変数が加わることによる推定精度の悪化は当初予想していたよりも大きくないという結果が得られた.
次に,ここまで得られた結果に基づいてSSP調査を用いてデータ解析を行った.2015年に行われた第1回SSP調査は全国の20歳から64歳までの男女9000人を対象にした面接調査であるが,回収率は39.7%で調査不能に由来するバイアスの影響が懸念される状況となっている.近年,「格差」は日本社会において重要な問題のひとつと考えられている.格差に関する国民の認識は格差を議論する上では基礎となるものであるが,国民の認識を知るためには社会調査を利用せざるをえないが,回収率が4割という状況では得られたデータを単純集計した結果をもとに格差を議論することには危うさも感じられる.本研究では,ここまで得られた結果に基づき,特別に変数選択は行わずに補助情報を利用して解析を行った.Fushiki & Maeda(2014)では,2010年に行われたSSP-I2010調査に対して調査不能バイアスを調整した解析を行っている.2015年のSSP調査において同一の質問項目に関して調査不能バイアスの調整を行うと,SSP-I2010調査の結果と同様の方向にバイアスが見受けられた.
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