研究課題
平成28年度は,無作為化比較第III相試験の結果をレトロスペクティブに解析することで,レスポンダーを同定するための方法「サブグループ同定手法(Subgroup identification method)」を提案した.臨床試験では,試験群と対照群に分けられ,それぞれに試験薬(試験治療),対照薬(対象治療)を実施するが,個々の患者にフォーカスを当てると,試験群の被験者に対する対照薬投与(対照治療実施)によるアウトカム,対照群の被験者に対する試験薬投与(試験治療実施)によるアウトカムは不明である.提案手法では,それらの不明なアウトカムの推定に一般化ブースティング手法を用い,個々の被験者に対する効果量(effect size)を推定した.そして,効果量の推定値の差が最大になるサブグループをアソシエーションルールの類推から構成される新たなアルゴリズムを開発したうえで適用した.その結果,提案手法では,サポート(試験全体での被験者数に対するサブグループに含まれる被験者数の割合)に対するサブグループのプロファイリングが可能であった.本手法では,一般化ブースティング及び新たなサブグループ同定手法を用いるが,前者は,一般化線形モデル及びCox比例ハザード・モデルに対する非線形回帰モデルによって構成されており,後者は効果量を定義することができれば,どのようなアウトカムにも適用できることから,アウトカムが連続量,2値,そして生存時間といった様々な場合に適用することができる.本手法は,日本計算機統計学会 第30回シンポジウム,日本計量生物学会 2016年度大会において発表した.
3: やや遅れている
平成27年度は,競合リスクに対する非線形回帰モデルの開発,平成28年度は,サブグループ同定手法の開発について研究を実施した.これらの手法の数理的解析及びプログラミング,簡単な数値検証は実施しており,学会発表にてその成果を公表している.ただし,これらの手法についての論文化が若干遅れている.その原因として,研究代表者が研究機関を移動したことによる医学系研究に対する共同研究が大幅に増加したことによって,そちらにエフォートが割かれていることが大きい.一方で,当該研究機関での体制整備が進んできており,過去2年間に比べてエフォートを割くことが可能になってきているため,これら2種類の研究内容に関する論文化を急ぐ必要がある.
平成29年度前半は,これまでの研究内容をまとめ上げ,論文化することに注力を注ぐ必要がある.具体的には,競合リスクに対する生存時間ABLE法(Automatic Binary Learing Estimator)及びMARS(Multivariate Adaptive Regression Splines)について,国内外の雑誌に投稿するとともに,レスポンダー同定手法の詳細な数値検証及び論文投稿を同様に実施する.現在,競合リスクに対する生存時間樹木構造接近法の開発,及びそれらのアンサンブル学習法への拡張の課題が残っている.そのため,上記論文の投稿後には,これらの課題を解決する.また,レスポンダー同定手法は,主に実験研究(臨床試験)を対象に利用することができる統計手法である.一方で,観察研究では,傾向スコア(propensity score)による解析が主流になりつつある.傾向スコアの推定には,古典的なロジスティック回帰モデルが適用されている.ただし,傾向スコアの主たる目標(治療群の選択を選ぶ確率)を正確に表しているとはいいがたい.そこで,予測確度が非常に高いルールアンサンブル法を傾向スコア計算のために拡張する方法を開発するとともに,3アーム以上の研究に対する拡張を検討する.
消耗品等で若干の差分が出たため.
消耗品費として利用する.
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Endoscopy
巻: - ページ: -
10.1055/s-0043-103409
Ann Surg Oncol.
巻: 23 ページ: 2928-2935
10.1245/s10434-016-5221-4
Breast Cancer
10.1007/s12282-016-0748-6
http://waidai-csc.jp/datacenter/%e5%ae%9f%e7%b8%be%e5%a0%b1%e5%91%8a/349