研究課題
近年,がん臨床研究領域では,免疫チェックポイント阻害薬の開発が脚光を浴びており,肺癌,胃癌領域を中心に開発が進んでいる.一方で,これらの免疫療法では,作用機序の観点から,比例ハザード性の仮定を満たさない.そのため,既存の比例ハザード・モデルの適用は困難である.今年度は,比例ハザード性の仮定を満たさない状況においてレスポンダーを抽出できる生存時間樹木法を提案した.この方法では,評価基準に境界内生存期間(RMST; Restricted Mean Survival Time)を用い,交互作用樹木の一つである,QUINT法(Dusseldrop & Mechelen, 2013)のアルゴリズムを応用することで構築した.その結果,非比例性の状況においても,生存時間分布の差異が顕著なサブグループを抽出することができるとともに,responder/Nonresponderの抽出を行うことができた.とくに,樹木による表現を用いることで,各サブグループにおいて,新治療が既存治療に著効なグループ(responder),治療効果に違いが認められないグループ,既存治療が新治療に比べて有効なグループを判断することができる.したがって,治療戦略について,医師等の非統計家が分かりやすい形式での結果の提示を行うことができる.その成果は,2018年度 統計関連学会 連合大会において発表した.さらに,昨年度に国際学会において発表した,線形項を伴うハイブリッド型の非線形回帰モデルとして提案した,ハイブリッド型AIM(HAIM; Hybrid Adaptive Index Model)を国際誌に投稿済みであり,現在,査読中である.
3: やや遅れている
本研究では,生存時間研究におけるサブグループ抽出法を提案しており,国内外の学会において,その成果を公表している.他方,これらの手法について,論文化が遅れている.その理由としては,本学が臨床研究中核病院を目指していることにある.この学内プロジェクトは,当該科研費取得後に学内で決定され,当方が所属する臨床研究センターがその中心となっている.これにより,大学の臨床研究の体制整備における管理業務(とくに,今年度に限っては,臨床研究法への対応),臨床研究中核病院の能力要件を満たすための臨床試験等の医学統計家としての業務(プロトコル作成,臨床研究デザイン,論文のための統計解析等)がエフォートの大多数を割いている.これにより,研究に十分な時間を得られないことが原因である.また,昨年度末には,体調不良により,入院および療養していたこともあり,業務時間も不十分であったことももう一つの原因である.
今年度は,本研究の集大成として,これまでに提案した方法,すなわち,(1)競合リスクを伴う非線形比例ハザードモデル,(2)アンサンブル学習法に基づくサブグループ抽出手法,(3)非比例性のもとでの樹木構造接近法,について論文化を行うとともに,シミュレーションによる評価を中心に行う.これまでに,提案した方法は,臨床研究において,とくに介入研究(臨床試験)を想定したものであった.一方で,近年は,ビッグデータ或いは疾患レジストリデータが脚光を浴びており,その意味では,観察研究を想定した方法の開発が必要である.そのため,新たな研究として,Tian et al.(2014)が提案した線形モデル(治療効果×共変量の交互作用を推定する方法)を非線形モデルのもとで,拡張する.具体的には,ルール・アンサンブル法の枠組みのもとで拡張する.これにより,治療×共変量の交互作用(予測因子)を高い予測確度のもとで抽出できるとともに,その結果はプロダクションルールで得ることが期待できる.
年度末に学会出張を予定していたが,体調不良で行けなくなったため.
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (3件)
Digestive Endoscopy
巻: 31 ページ: 125~133
10.1111/den.13290
Oncotarget
巻: 10 ページ: 847~855
10.18632/oncotarget.26614
Anticancer Research
巻: 39 ページ: 1059~1065
10.21873/anticanres.13213
Trials
巻: 20 ページ: -
10.1186/s13063-019-3201-2
巻: 19 ページ: -
10.1186/s13063-018-3002-z
Langenbeck's Archives of Surgery
巻: 403 ページ: 711~718
10.1007/s00423-018-1710-1
Clinical Lung Cancer
巻: 19 ページ: e871~e874
10.1016/j.cllc.2018.08.001
The Oncologist
巻: 23 ページ: 1411~e147
10.1634/theoncologist.2018-0175
10.1186/s13063-018-2810-5
JMIR Research Protocols
巻: 7 ページ: e11191~e11191
10.2196/11191
10.1186/s13063-018-2756-7
巻: 403 ページ: 561~571
10.1007/s00423-018-1692-z
Journal of Gastroenterology
巻: 54 ページ: 122~130
10.1007/s00535-018-1487-6
Oncology
巻: 95 ページ: 116~120
10.1159/000488861
Journal of Clinical Neuroscience
巻: 53 ページ: 100~105
10.1016/j.jocn.2018.04.017