研究期間を通して、交付申請書に記載した3つのテーマを意識して研究を推進した。 テーマ「回帰関数の推定」では、歪曲度のパラメトリック推定で1本、多変量非線形回帰で1本、低次元多様体に埋め込まれた回帰関数の推定で1本、計3本の論文を出版し、機械学習アルゴリズムに基づく方法に関する論文が1本採択印刷中である。 テーマ「密度関数の推定」では、ロバストな局所密度推定の論文が1本出版され、ダイバージェンスに基づく局所推定の論文が1本採択された。 テーマ「パターン認識」では、高次元パターン認識で現れるナイーブホテリング統計量の高次元漸近理論に関する論文が1本採択され印刷中となっている。 最終年度は、ヒルベルト空間における分布型の検定について研究を行った。このような正規性の検定は、遺伝子発現データや画像データなど、いわゆる高次元小標本と呼ばれるデータに適用可能であり、広い応用が期待されるものである。具体的には、カーネル平均埋め込みに基づくMaximum Mean Discrepancy(MMD)による正規性の検定についてその漸近的性質を調べた。特に、対立仮説(非正規分布)および局所対立仮説の元での検定の漸近挙動に関して理論的結果を得た。局所対立仮説のもとでの漸近挙動は、帰無仮説(正規分布)の元での漸近挙動を含むものである。また、シミュレーションを通して、MMDに基づく正規性の検定の実際的振舞いも調べた。さらには、高次元でも高速で実行可能な近似検定についても開発し、高次元の実データへの適用を通してその有用性を確認した。このような成果が論文にまとめられ投稿した。歪曲度のノンパラメトリック推定についてもその方法を開発し、理論的挙動を調べ、成果を学会・研究集会で発表した。
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