研究課題/領域番号 |
15K00049
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
早川 岳人 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (50362918)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 健康寿命 / データヘルス / 地域づくり / 生活習慣病 / 介護予防 / 特定健診 / 介護保険 / 医療費 |
研究実績の概要 |
本研究では、一般市民の生活習慣と健診など保健事業への参加状況に基づくコホート集団を構築し、そのエンドポイントとして介護保険情報や人口動態統計情報などのデータヘルスデータを用い、母子保健、壮年期、高齢者の保健事業が生活習慣病や日常生活動作、健康寿命に与える影響について考察する研究である。 健康寿命の延伸は保健医療福祉分野において、重要なアウトカムであり、評価を行う上で意義は大きい。 平成30年度は、昨年度までに引き続き、行政と協働で地域診断を行い、地域(地区)によって疾病構造や生活習慣が異なることを明らかにしてきた。1.6歳時健診のう歯有病率は地域による差はみられなかったが、3歳時健診では、 旧市街に比して郊外や農村地域で高くなっていた。これは、郊外は二世帯家族以上が多く、乳幼児を育てているのが親だけでなく祖父母もおり、祖父母が孫に対する歯のケアがあまいことが考えられる。 また、フィールド地域を含めた当該県は、全国と比較して肥満度が高く、特に子ども時期からの肥満が多いことが分かった。肥満は将来の生活習慣病への影響が大きいことは、これまでの研究で明らかになっていることから、子ども時期からの肥満への予防が重要であることが示唆された。 地域づくりとして、介護予防に資する住民主体の通いの場の整備を行っている。フィールド地区は人口32万人(高齢化率20%)であるが、800カ所で週一回以上の通いの場が出来ており、国の目標の10%を達成できている。今後も年齢や身体状況によって分け隔てることなく誰でも参加し、交流していく住民主体の通いの場を構築していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定より既存データの突合が複雑だったことから、研究期間を1年延長し、さらに突合の精度を高め、詳細な分析を行うための作業を行うこととした。 健康寿命の延伸において、保健医療福祉分野が担う要因を明らかにし、公衆衛生の視点から社会への還元を提示する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
国民の願いは、高齢になっても健康で自立した生活を送ることであるが、その評価指標である「健康寿命」の計測は容易ではない。そこで本研究では介護保険や人口動態統計情報を利用し、保健事業等への参加状況別の健康寿命を算出する方法を試みている。2008年度に福島県郡山市民約1万人を対象に、郡山市保健所との共同事業として生活習慣や健診受診状況に関する大規模調査を実施した。この集団をベースラインデータとし、健診受診や様々な保健事業への参加状況別に対象者を追跡し、保健事業の参加が健康寿命に及ぼす効果を検証している。 郡山市第二期データヘルス計画によると、55歳以降の循環器の疾患、悪性新生物医療費は、特定健診、特定保健指導の実施率向上や、市民自らの生活習慣の改善で予防効果を期待しているが、平均寿命が長くなっている社会的背景を鑑みると大きな医療費の削減は相当の努力が必要と思われる。認知症患者の増加、終わりの見えない治療、尊厳死の考え方など、市民の意識にも関わる課題である。加えて、壮年期の精神及び行動の障害に対する積極的なアプローチは、福島県内の他市町村、全国的にみても東北地方の特徴の一つであるので今後の課題であろう。 本研究の特徴の一つとして、地域集団をベースに日常の生活習慣や保健事業等の参加状況の視点から包括的に健康寿命を把握できる点がある。健康寿命の延伸は保健医療福祉の各分野の総合的な働きかけが必要であり、データヘルスを使用してエビデンスを出していく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィールド先の役所との相談の上、人口動態保健統計の突合、既存の保健データ(データヘルスデータ)の活用を今年度に実施することになったため。 データの収集作業が遅れに伴い解析データベース作成が予定より遅れたため、これらの作業にかかる人件費及び学会報告に要する旅費等が未執行となったため。
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