研究実績の概要 |
平成28年度は,①全国介護レセプトデータの研究使用のためのデータ整備の方法をまとめ, 広く周知することにより, 今後続く研究者に統一したデータを提供するための礎を築く, ②国民基礎調査における拡大係数の推定を通して, 全国の代表値を推定する方法を確立し, これをあとに続く研究者に提供する, ③今後の日本の発展のために,これらの調査が今のままでよいか,どのように変えていくのがよいかを提言する, の3点から深めた. 本調査については, 国が主導した検討が始まっており, それらは人口・社会統計部会において, 第19回母集団の推計について, 第37回傾向スコアによる総所得の推定について, 第68回 国民生活基礎調査の調査設計・推定方法に関する研究会,等で, 統計学的観点からの検討が行われてきた(現在は停止の模様). 研究班の中で, 国民生活基礎調査には下記の問題等があることが共有できた. すなわち, 1)3年ごとの大調査と毎年の小調査ではサンプルスキームが異なる, 2)小調査 全国のみ, 都道府県表章はしない, 3) 2段階ランダムサンプリング, 4)大調査 都道府県表章するために, エラー幅を一定にする(抽出数を都道府県で等しくする)が, これが調査をややこしくしている, 4)単位区「5年おきの国勢調査の時に確定する」を用いる,5)Random Sampleにできない点, 6)母数推定における比例方式の件(大調査VS小調査) , 7)国民生活基礎調査では, 総務省が進めている 匿名の練習用データセット提供できない(世帯と拡大乗数の関係から, 同定できてしまう), 8)大きな調査が入ると, 次年度はその地区は調査から外れる(biasを生じるがその評価がなされていない).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
介護給付費等実態調査のデータマネージメントについては情報として集約されている. 国民生活基礎調査は,戦後まもなく, 1)厚労行政の企画運営の基礎資料を得る, 2)他の世帯標本調査の親標本となるという趣旨で, 開始されていおり, そもそも政策評価などのための資料とするには, むつかしさがある(厚生労働省50年史). これに関し, 改善のために修正を要するという立場と, そもそもそのようなデータなのだからそれを理解して利用していただく, というような立場がある. 国民生活基礎調査については, いろんな角度からすでに検討が入っていることを把握できた. これらの動向を注視し, 利用者の立場と, 統計家の立場から,この基礎調査の持つ問題点や, どのように使うとその趣旨に合うかなど,拡大係数, サンプリングバイアスなどを把握した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は, 介護給付費等実態調査のデータマネージメントについて, まずこれを文書化する.国民生活基礎調査については, (1)現在の問題点をまとめ, (2)外国の状況をまとめる,特に(3)サンプリングの構造を確認し, 拡大係数などの正確な解釈のための情報をまとめる.また, 利用者の立場から, 介護関係であった方がよい項目など列挙し, これを調査項目に入れするなどの方策を考える.また介護保険と基礎調のマージで, 何ができるのかという視点. 何が足りないのか, というような視点から, 国民生活基礎調査の今後の発展に寄与する予定である.
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