研究課題/領域番号 |
15K00052
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研究機関 | 宮崎県立看護大学 |
研究代表者 |
中尾 裕之 宮崎県立看護大学, 看護学部, 教授 (40336293)
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研究分担者 |
高橋 邦彦 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50323259)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メタアナリシス / 疫学 / 用量反応関係 |
研究実績の概要 |
疫学研究では,ある因子の曝露量がいくつかの区間にカテゴライズされた区間データとして表され,疾病リスクは,その区間ごとに基準群に対する相対的な値が要約データとして表されることが多い。そのようなデータに対して,非線形な,特に,J型の用量反応関係を検討する。我々は,区間データを適切に取り扱いながら,3次スプラインの曲線当てはめを用いて推定する手法を提案している。本研究では,アルコール摂取と総死亡の関連のメタアナリシスの先行研究(Di Castelnuovo et al, 2006)のデータに対し,その手法を適用した再解析を行い,その結果について検討を行った。その成果の一部について学会発表(1)を行った。 また,平成28年2月に宮崎県立看護大学において『非線形用量反応関係の統合のための新たな方法論の開発』研究集会を開催し,これらの結果やメタアナリシスにおける方法論について,医学,疫学,看護学研究,保健医療分野への適用可能性や,それぞれの専門的な観点からの議論を行った。
(1) Nakao H, Takahashi K, Hattori S (2015). Meta-analysis of J-shaped dose-response curves on alcohol dosing and total mortality. East Asia Regional Biometric Conference 2015, Dec. 20-22, 2015, Fukuoka, Japan.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ある因子の曝露量がいくつかの区間にカテゴライズされた区間データとして表され,疾病リスクは,その区間ごとに基準群に対する相対的な値が要約データとして表されている状況で,用量反応関係を検討する場合,そのようなデータに対して,我々は,区間データを適切に取り扱いながら,3次スプラインの曲線当てはめを用いてJ型の用量反応関係を推定する手法を提案している。本研究では,その手法を複数の曲線の統合に拡張し,アルコール摂取と総死亡の関連のメタアナリシスの先行研究(Di Castelnuovo et al, 2006)のデータに適用して,再解析を行った。その結果,提案法により推定された曲線と従来法とでは,とりわけ用量の低いところで異なっていることが明らかとなり,採用される回帰モデルや曝露量の割当方法の違いに敏感に影響されるため,非線形な用量反応関係のメタアナリシスの結果を解釈する場合に注意を要することがわかった。これらの成果の一部について学会発表を行った。 また,平成28年2月に宮崎県立看護大学において『非線形用量反応関係の統合のための新たな方法論の開発』研究集会を開催し,J型の用量反応曲線のメタアナリシス,陽性反応的中度のメタアナリシス,二値データに対する用量反応性のメタアナリシスなど,メタアナリシスにおける方法論の新展開とその実践について,医学,疫学,看護学研究,保健医療分野への適用可能性や,それぞれの専門的な観点からの議論を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に得られた結果を基にして,平成28年度は以下を中心に研究を実施していく。 平成27年度に行った実データを適用した再解析について,引き続き,従来法との違いと有効性を評価するとともに,この研究成果を論文としてまとめる。 次に,統合方法の違いについての比較と評価を行う.非線形な用量反応関係の統合において,想定するモデルの違い,推定方法の違い,データを利用する手続きの違い(個々の研究結果をまとめて統合するか,個々の研究の曲線を推定した後に統合するか),区間データの代表点の選び方の違い(尤度に基づく方法か,中点を割り当てるか等)を評価する。AICやCV等のモデル評価の手法を用いて,有効である手法と手続き,また,それが有効となる状況を明らかにする。 さらに,用量反応関係のメタアナリシスにおける同質性・異質性,公表バイアスの評価を行う。メタアナリシスによって結果の統合を行う場合,用いられる論文報告のエビデンスがある方向に偏っていれば,公表バイアスの問題が生じる。しかしながら,用量反応関係のメタアナリシス,特に,非線形な関係である場合においては,公表バイアスの評価方法が確立されていない。そこで,用量反応関係のメタアナリシスを行う場合に,多変量funnel plot等,従来の評価方法が適用可能か,また,どこに問題があるかを明らかにする。 また,平成27年度に引き続いて,研究集会を開催し,メタアナリシスにおける方法論の新展開とその実践について,医学,疫学,看護学研究,保健医療分野への適用可能性や,それぞれの専門的な観点からの議論を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に,提案法をメタアナリシスの実データに適用して,再解析を行った。その結果を基に,従来法との違いと有効性を評価する予定であったが,評価方法の一部に追加の検討が必要であることがわかったため,未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため,再解析を基にした,従来法との違いと有効性の評価を次年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てることとしたい。
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