2017年度にあがった最も大きな成果は,野球のトラッキングデータについてのものである。前年度に明らかにした故障のリスク要因に関する分析をさらに進め,PITCHf/xデータ(トラッキングデータ)から投手の疲労度や投手ごとの疲労時の傾向を掴むためのモデリングを行い,これらを表す特徴量の抽出をおこなった。さらに,それらの特徴量を用いて,故障のリスク要因解明のためのモデルを改良した。これにより,判別器としての予測精度が大幅に向上するとともに,得られた結果の解釈も妥当であった。この成果は9月の国際会議にて発表を行った他,現在論文投稿の準備中である。 それ以外にも,野球のトラッキングデータからの特徴量を用いた評価指標の改善や,サッカーにおけるトラッキングデータを用いたプレイ自動タグ付けアルゴリズムの開発にも取り組んだ。とくに前者については成果が見え始め,2018年中に研究発表や論文投稿を行う予定である。 さらに,本科研費の共催イベントとして,9月の統計関連学会連合大会内での企画セッション,6月,12月,3月のシンポジウムを開催し,上記内容を含む講演や議論の他,スポーツ統計科学に関わる多くの研究者およびスポーツ現場や業界に携わる実務家との研究交流,意見交換を促進した。また,スポーツデータ解析コンペティション開催への協力,外部イベントであるスポーツアナリティクスジャパンへの協力を行い,研究者や大学院生,大学生,そして中高生へのスポーツ統計の普及啓発にも引き続き取り組んだ。
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