研究課題/領域番号 |
15K00055
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
津熊 久幸 東邦大学, 医学部, 准教授 (50424685)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多変量推測理論 / 統計的決定理論 / スタイン現象 / 縮小型推定 / 高次元モデル |
研究実績の概要 |
近年、分析が困難なほど大規模で複雑なデータの活用が注目され、そのようなデータの効率的な分析手法が数多く提案されるようになった。しかし、各手法の統計理論からの吟味や分析結果の正しい解釈などの議論は十分深まっているとは言えず、大規模データを分析する上で基礎となる多変量推測統計学の体系的な理論構築が焦眉の課題となっている。本研究では、大規模データを解析する上で必要となる高次元モデル,特に非正則ウィシャート行列を利用する推測問題を中心に扱い、統計的決定理論の観点からの最適性を有するベイズ推定法や縮小推定法の開発とその応用、高次元モデルの推定理論における未解決問題の検討、さらに高次元モデルに関連する諸問題の統計学的・数学的な考察について研究を行うことを目標としている。 今年度は共分散行列の推測問題を中心に扱い、以下のような成果を得た。 (1) 損失関数やリスク関数の評価方法を工夫することによって、低次元モデルの下で得られている推測手法を高次元モデルの解析に応用するための方法を考案した。この結果から、様々な推定手法のリスク関数の比較が可能となり、推定精度の高い手法の確立に成功した。 (2) 補助統計量として位置母数に関する統計量が利用できる場合について、パラメータの次元や標本サイズの様々な大小関係の下で統一的に扱うことを考えた。この場合も、その補助統計量を利用して推定精度を高める方法を統一的に議論できることを確認した。 (3) 共分散推定量の推定問題は、共分散やその推定量に対して岩澤分解を施すと、複数個の平均ベクトルと分散の同時推定問題に分解できることがわかった。この結果から、平均ベクトルと分散の改良型推定量を使って、新しい共分散行列の推定量を構成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかの推定問題において、最適性をもつ新しい推定量の導出や統一的な評価方法の確立に成功したため。また、それらの結果が新たな課題を示唆しており、研究計画の方向性がある程度確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
順調に研究が進んでいるため、引き続き当初の計画通り研究を遂行する予定である。具体的には、非正規や非正則モデルなど複雑なモデルに対するベイズ推定手法の考案や、密度関数の予測問題についての研究、計算機での効率性や実データへの応用に関する問題などに取り組む予定である。
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