研究課題/領域番号 |
15K00057
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
千葉 康敬 近畿大学, 医学部附属病院, 准教授 (80362474)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 因果推論 / 統計的仮説検定 / ランダム化試験 |
研究実績の概要 |
2値アウトカムを比較する2群間ランダム化臨床試験においては、Fisherの正確検定が主要な統計的仮説検定手法の1つである。しかし、Fisherの正確検定で検定しているのは、治療の因果効果が全員について等しいというsharpな因果帰無仮説のためのものであって、因果リスクが2群間で等しいというweakな因果帰無仮説ではない。「sharpな因果帰無仮説が成立すればweakな因果帰無仮説も成立する」という命題は正しいが、その裏は一般に正しくない。したがって、Fisherの正確検定で帰無仮説が棄却されても、それは平均因果効果があることを意味しない。よって、weakな因果帰無仮説に対する統計的仮説検定手法を用いるべきなのだが、そのような手法は開発されていない。そこで、本研究ではこの統計的仮説検定手法について議論する。 本年度は、weakな因果帰無仮説に対する1つの統計的仮説検定手法を提案した(Journal of Biometrics and Biostatistics 2015; 6: 244)。この検定手法は正確な検定であって、Fisherの正確検定のweakな因果帰無仮説に対する統計的仮説検定への拡張とみなされる。また、この検定手法に対応する正確な信頼区間の構成、非劣性試験への拡張も簡単に行えることも示した。このことより、提案した検定手法は、統一的なアプローチとして、実際のランダム化臨床試験に適用可能である。 もう1つの主要な統計的仮説検定手法として、Barnardの正確検定がある。しかし、この検定手法は、一般に、因果帰無仮説に対する統計的仮説検定ではない。これまで、このことはほんとど議論されてこなかった。そこで、信頼区間に基づいてこのことを説明することも行った(International Journal of Clinical Research and trials 2015; 1: 102)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画としては、最初の2年間で、weakな因果帰無仮説に対する統計的仮説検定手法を提案し、既存の正確検定手法(Fisher及びBarnardの正確検定)との違いを明らかにする予定であった。これらの課題は最初の1年間でクリアすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
競合する正確な信頼区間の構成法が提案された(Rigdon and Hudgens, Statistics in Medicine 2015; 34: 924-935)。本研究で提案した方法と比較することが必要である。これについてはすでに取り組んでおり、次年度に報告できる見込みである。 当初の計画では、次に、提案した方法を実行するための汎用プログラムの作成を行う予定であった。しかし、当初の計画以上に研究が進展しているため、その前に、提案した方法の層別解析への拡張、サンプルサイズ設計の方法について議論する。これを次年度の課題とする。その後で、まとめて汎用プログラムの作成について考えることにする。なお、層別解析への拡張については、2016年夏にChicagoで行われるJoint Statistical Meetingにおいて学会発表する予定である。また、この頃までには論文投稿できる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたパソコンの購入を次年度以降にすることにした。現時点での性能のパソコンを購入するよりも、汎用プログラムの作成に取り組む時点での性能のパソコンを入手したほうが効率が良いと考え直したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
最も効率的にバランスよくパソコンの購入とSAS(統計解析ソフト)の年間ライセンス契約ができるように、タイミングをよく考えてこれらの費用に充てる。
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