研究実績の概要 |
本研究の主目的は、弱い因果帰無仮説に対する統計的仮説検定手法とその周辺(信頼区間の構成法など)を議論することである。 今年度は、昨年度提案した弱い因果帰無仮説に対する正確検定手法とそれに対応する正確な信頼区間(Chiba, Journal of Biometrics and Biostatistics 2015; 6: 244)に関して、さらに議論を深めるとともに拡張を試みた。 まず、競合する正確な信頼区間の構成法(Rigdon and Hudgens, Statistics in Medicine 2015; 34: 924-935)が過度に保守的になることがあることを実データに基づいて示した(Chiba, Statistics in Medicine 2016; 35: 1739-1741)。このことは後にモンテカルロシミュレーションによって確かめられた(Rigdon, Loh, and Hudgens, Statistics in Medicine 2017; 36: 876-880)。また、Barnardの正確検定に対応する信頼区間であるSantner-Snell信頼区間が因果効果の信頼区間とはなり得ないことも数値例に基づいて示した(Chiba, Journal of Biometrics and Biostatistics 2016; 7: 288)。 次に、サンプルサイズ設計の方法を提案した(Chiba, Open Journal of Statistics 2016; 6: 766-776)。当初の予想通り、原理自体は難しくないが、現実的に適用不可能なほど計算に時間がかかるという難点がある。近似計算法の開発が今後の課題となる。 最後に、層別解析と2×J分割表への拡張を試みた。これらについては論文投稿済みであり、次年度に報告できる見込みである。サンプルサイズ設計の方法と同様、計算に時間がかかるという難点がある。
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