研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に引き続き、提案した弱い因果帰無仮説に対する正確検定手法とそれに対応する正確な信頼区間(Chiba, Journal of Biometrics and Biostatistics 2015; 6: 244)に関して、さらに議論を深めるとともに拡張を試みた。 まず、層別解析への拡張を行った(Chiba, Biometrical Journal 2017; 59: 986-997)。計算(時間とメモリ)に限界があるために強い因果帰無仮説に対してであるが、層別しない場合、既存の方法(Jung, Biometrical Journal 2014; 56, 129-140)、提案法をシミュレーションで比較した。結果は、提案法の検出力が最も高いことを示した。また、弱い因果帰無仮説については、実際例で上記3つの方法を比較した。強い因果帰無仮説に対するシミュレーションと同様、提案法の検出力が最も高かった。 次に、結果変数が順序カテゴリカル変数である場合への拡張を行った(Chiba, Statistics in Medicine 2017; 36: 3966-3975)。ここでは、正確な検定と信頼区間に加えて、因果効果の仮定によらない最狭存在範囲を導出するための数値計算法も提案した。しかし、層別解析同様、計算(時間とメモリ)に限界があるという欠点がある。 これまでに提案してきた一連の方法は、信頼区間が因果効果の仮定によらない最狭存在範囲の範囲内に存在するという利点がある。しかし、区間推定はランダム化に基づく方法を採用しているのに対し、点推定はそうではない。この部分をうまく処理する方法について、現在論文投稿中である。
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