研究実績の概要 |
これまでに提案してきた2×2分割表の弱い因果帰無仮説に対する正確検定手法とそれに対応する正確な信頼区間に関して、昨年度、結果変数が順序カテゴリカル変数である場合への拡張を行った(Chiba Y, Statistics in Medicine 2017; 36: 3966-3975)。今年度は、これをベイズ統計学の枠組みで議論した(Chiba Y, Journal of Causal Inference 2018; 6: 20170019)。これまでに提案してきた一連の方法と同様、事後分布が因果効果の仮定によらない最狭存在範囲の範囲内に存在するという利点がある一方で、計算(時間とメモリ)に限界があるという欠点がある。 また、これまでの内容を、臨床試験で注目されることがある予後因子と予測因子の推測への適用を試み、既存の方法との関係も考察した(Chiba Y, Clinical trials, in press)。既存の方法を、本研究で用いているresponse typeで説明することにより、既存の方法では、特定の条件の下でのみ予後因子と予測因子の推測を適切に行うことができることがわかった。それに対して、提案した方法では特定の条件を必要としないため、柔軟にデータに適用することができる。 その他、最近、生存時間解析で注目されているnet benefitという指標について議論した(Chiba Y, Epidemiology, Biostatistics, and Public Health 2018; 15: e12993)。これまでnet benefitはランダム化試験にしか適用できなかったが、本研究により、観察研究で交絡を調整することが可能になった。
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